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高齢者の技術と経験に光を当てる

障がい者福祉の中には就労支援という考え方があるが、高齢者福祉には存在しない。いわゆる元気なお年寄りといわれる方はもちろんのこと、何らかの疾患があったり認知症だとしても、わずかな手助けや声がけや見守りがあれば、できることはたくさんある。2つの事例からこのことについて考えた。

ケース1:潜在している力をどう活かす?

 Aさんは、60代の男性で建設業に従事していた。十数年前、仕事中に転落し、脳挫傷による高次脳機能障害を患った。現在、仮設住宅で生活中。生活全般は自立しており、食器洗いや掃除もこなす。が、その一方で決まりきまったことから逸脱することに適応できない。もともと大工だったため体づくりには余念がなく、毎日筋トレを欠かさない。よく散歩もするせいかご近所の様子にも明るい。

 年齢的には高齢に満たず、障がいの認定も下りなかった方は社会保障という意味でも負担が大きい。Aさんはまだ若い。労働力もある。それだけに、もっとAさんの勤勉さや作業の正確さといった長所を活かしつつ社会の中で生きていく道はないだろうか。ご自身も家族に庇護されるだけの人生を望んでいるわけではないだろう。

ケース2:働くことと生きることは不可分で切り離せない

 Bさんは80代の男性。かつて漁師だったが、現在は認知症があり要介護度3の認定を受けている。かつては山で切った木で養殖いかだを作り、カキを養殖し、畑で野菜を育ててきた。いまでも見える山々はすべて自分の山だと言う。

 山に行くと言って外に出ては、ずんずん歩き出す。Bさんにとっては仕事に行くという目的があるのだが、周囲の人々はそれを徘徊と呼ぶ。海の男だったからトイレは屋外が当たり前、今でも畑に排泄をする。しかし、漏便するわけでも失禁するわけでもないのに、それは問題行動とみなされてしまう。

 畑仕事をお願いすれば巧みにスコップを使い、冬に雪が積もってくると自ら外に出て行って雪かきをする。大工仕事をお願いすると上手にのこぎりを扱う。

 もともと職人気質で短気である。「べらんめえ」口調は、暴力的と評価されてしまう。

 彼の生きてきた背景と、来し方を考えたら当然のことが、支援する人間の理解の範疇を超えると「問題」ととらえられてしまうことが往々にしてある。

 体で覚えたことは体に染みついて忘れない。頭で考える前に体が動いてしまうのだ。
 Bさんの力をもっと活かすことができれば、そのとき彼は、問題行動のある面倒くさい老人から、多くの知恵や技術をもつひとりの個人に戻れるのではないだろうか。

次のページは・・ 個性や力を埋もれさせない柔軟な価値観が必要

キーワード: 見守り , 認知症

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