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ある認知症対応型デイサービスの立ち上げ物語 vol.4

4回目の今回は、デイサービスの出航を前にして多くの地域の人からの協力を得られたこと。それを通じて実感した地域密着型サービスの本質とは何かについて触れたい

関連記事:vol.1 vol.2 vol.3

民家改装型の小規模デイサービスとは?

 私たちが実際の支援を行う場所は、築50年以上の民家である。この民家改装型の小規模デイサービスは、昨今では、ローコストではじめられるお手軽介護サービスの一つと言われることも多い。

 一部の民家改良型小規模デイサービスで起こった火災などから、虚偽申請や違法建築などが問題となっているので、実際に行政への申請時には、審査自体がかなり厳しくなっている。「手軽に始められるデイサービス」とは言えなくなるのかもしれない。実際に物件を探してみると、法に適合した条件のものはほとんど見当たらず、場合によっては改装するより新規で立ち上げたほうがお金がかからないようなケースもあった。

民家活用型にこだわったわけ

 私たちがあえて民家を使った事業所にこだわったのには、どうしても譲れない理由があった。それは、以前関わりのあったAさんからのひと言、「兄ちゃんに誘われたから来たけど、こんな病院みたいなとこ、私には用はない!」であった。

 当事、ある地域密着型サービスの施設の管理者であった私は、言葉巧みにAさんを説得し誘い込んだ。慣れてくると楽しそうに周りの方と馴染む姿もあり、私自身安心していた。ところがある日、なんとなく元気のないAさんに気づき声をかけたところ、痛恨のつぶやきが帰ってきた。

 「なんでこんなことになったんだろうね。みなさんいい人だけど・・・。とうとうこんなところに厄介にならなきゃいけなくなったんだねぇ・・・。兄ちゃんいい人なんだけど・・・。私なんでこうなっちゃったんだろう・・・。頭がバカになったからしかたないのかね・・・。死にたいわ・・・」

 断片的な言葉ではあるが、このつぶやきに私は正直返す言葉を失ってしまった。

 初めて利用されたときのことを思い出したからである。Aさんは、明らかに誘われた環境に違和感を感じ、抵抗していた。その意思表示もしていた。Aさんの生活状況を鑑みると必要であったとは言え、その不安に対して、私が蓋をするようにして説得し、利用にまでつなげたことも事実であった。

 ただでさえ、「なぜ介護を受けなくてはならないのか」という病識が、認知症であるため困難で、初めて出会う環境へのインパクトはおそらく私が想像する何倍も大きなものであっただろう。

 なかには、新しい環境に適応し、心から介護サービスを楽しんでいるように見える方もいる。しかし、一方でそれらの変化へ適応するためには、絶望感や諦めとセットにしなければならない方がいるのも事実であろう。

 能率や効率、安全性を考えれば介護専用施設がよいのは明らかかもしれないが、この心の衝撃を少しでも和らげられる環境があるとするならばそれは「住み慣れた我が家に近い、○○さんの家」というような、今まで気軽に立ち寄ってきた暮らしの場の中であると私たちは思っている。だからこそ、私たちが選んだのは最新鋭の船舶ではなく、「暮らしの歴史が感じられる船」だったのである。

次のページは・・ 私たちの船はこんなところ

キーワード: 地域密着型 , 認知症 , デイサービス

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