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障がい者施設の殺傷事件で考えること

神奈川県相模原市の知的障がい者施設で発生した殺傷事件は、死者19名、負傷者26名の大惨事となりました。「二度と悲劇を生まないために、私たちは何を考えるべきか」を探ってみました。

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セキュリティや情報共有などの課題の先に……

 先週、私も施設を訪れて、門前に花をたむけさせていただきました。周囲には依然として警察官が立ち、マスコミ関係者が道を埋め、物々しい雰囲気に包まれています。周囲には民家も多く、旧宿場町ということで観光に訪れる人も目立つ中、入所者と地域の交流も活発に行われていたといいます。そうした多様な人々が一体となった穏やかな日常が、一日も早く戻ることを願わずにいられません。

 今回の事件が起きてから、施設側のセキュリティや行政間での情報共有などが課題として指摘されています。一方で、施設におけるセキュリティを強化した場合に、地域との交流や当事者の社会参加との両立は維持できるかという課題も持ち上がっています。「夜間警備や防犯カメラ(記録用ではなく侵入者対策用)等の拡充で当事者を守る」というしくみは必要としても、それだけでいいのかどうか。それを検証するには、「社会のあり方」にも目を向けることが必要ではないでしょうか。

なぜ「情」という防波堤が機能しなかった?

 今回のように逃走や抵抗が難しい人々に対し、これだけ執拗な殺傷行為に出るというのは、本人の中に「(身勝手としか言いようがないものでも)相当に強い衝動」が生じていたといえます。しかも、本人は過去にそこで働き、少なからず当事者と接する時間をもっていたわけです。どんなに偏った考え方に支配されていても、いくらかでも「情」は残り、それが最後の防波堤として立ちふさがるはずです。しかし、その防波堤を乗り越えてしまうということは、何かの力が彼の後押しをしてしまったのではと思えてなりません。

 それは何でしょうか。今でもネット上では、彼の犯行を礼賛するような記述も散見されます。また、以前から、障がいをもった人をはじめ、社会的な弱者に対する差別的な言動が(社会的地位のある人からでも)発せられ、それが拡散するという光景も見られました。

 それはごく一部の偏った考えと言えるかもしれません。しかし、社会全体の構造が無意識のうちに人の心をむしばむことがあります。そのむしばまれた心の隙間に、先のような差別的発信がすっぽり収まると、そこに「一理あるのでは」という思考が生じることもあります。もちろん、通常であれば「それはやっぱりいけないこと」という内省をもって排除されるものですが、社会全体で「むしばまれる穴」がどんどん広がり、差別的思考を排除する力が薄くなりがちな風潮も感じられます。

次のページは・・ 犯人の言説に垣間見られる心の隙間

キーワード: 事件・事故 , 障がい者 , リスクマネジメント

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