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AIによる認知症ケアを機能させるには

個人の経験値を共有価値へと進化させる

 まさに複雑系の極みといえる課題に対し、「人」の力だけでケアの手法を体系化するのは限界があります。仮に「効果的なケア」が実践できたとしても、個人の経験的な技能に頼らざるをえない傾向があります。

 結局、組織や業界におけるケアの底上げを普遍的に行なうには、地道なOJTなどを通じて各個人の経験値を上げるというのが常套手段となります。つまり、それだけの余裕が現場にあるかどうかが問われ、組織のあり方や人員配置の規模も大きく影響するわけです。

 この複雑系の部分に「AI」を効果的に投入することができれば、個々の職員の経験値にかかわらず、一定の技能を共有しやすくなります。たとえば、現場でそのつど累積された情報(利用者のアセスメント、モニタリングの情報など)をAIが解析し、「ケアに際して配慮・注意すべき点」を導き出してくれるとするなら、リーダーや管理者による助言や指導もかなり効率化することができるでしょう。

 ただし、ここで注意すべき課題があります。先に述べたように、本人のBPSDを左右する要素として、「支援者等との人間関係」も大きなポイントとなります。そこには、支援者側の内的な要素(心身の状況や感情コントロールなど)も当然かかわってきます。

 たとえば、家族の介護疲れが蓄積することで、家族自身が無意識のうちに本人に対する言動がきつくなり、それが本人のBPSDに影響を与えることがあります。そのため、家族の介護疲れの解消(レスパイト)は、認知症ケアに際して(間接的に)欠かせない支援として位置づけられているわけです。

国が定める基準・報酬もAI解析が必要に?

 同様のことは、プロである介護・医療関係者にも言えるでしょう。スタッフ自身の体調不良やストレスの蓄積、感情コントロールの不備などは、認知症ケアを適切に進めるうえでは意識的に解消を図らなければなりません。しかし、職員個人の心構えや取組みだけでは限界があります。職員が心身ともに健全な状態で利用者と向かい合えるようにするには、組織としての労務管理の拡充も不可欠となります。

 このあたりについては、AI開発側も想定しているはずです。つまり、必要な認知症ケアの解析を行なう中で、「現場職員への組織的なケアの状況」もきちんと織り込む必要があるということです。さらに言えば、国が定める人員基準や報酬のあり方が、適切な認知症ケアを維持できる水準になっているのかどうかもAIが解析すべき課題となるはずです。

 「そこまで解析しなくても、現場負担を軽減できる」という意見もあるでしょう。しかし、AIを適切に機能させるには、関連データをまんべんなく集積できるかどうかがカギとなります。少なくとも、職員の業務環境が適切かどうかは欠かせないデータとなるはずで、その部分がすっぽり抜け落ちてしまっては解析に必要な材料が揃うべくもありません。

 この点を考えたとき、AI開発側としては、そのAIを適切に機能させるうえで随時の政策提言を同時に行なっていくことが必要ではないでしょうか。せっかくのAI技術を100%機能させるのに、どのようなサポートが必要なのかをしっかり考える必要があります。

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キーワード: 科学的介護 , AI , 認知症

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