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10月からの福祉用具貸与の展望

2018-08-14

厚労省は、「福祉用具の全国平均貸与価格および貸与価格の上限の公表」について通知を発出しました。福祉用具貸与については、10月から「全国平均貸与価格を利用者に説明すること」と「貸与価格が上限を超えた場合に報酬が算定されないこと」が決まっています。その基準となるデータが示されたわけです。

利用者自らが平均価格等を調べるとなれば…

今回示された「平均貸与価格および貸与価格の上限」は、(1)商品コード、(2)メーカーの法人名、(3)商品名、(4)型番という項目で示されています。ただし、「商品名」だけを見ても、「それがどのような福祉用具なのか」という種別がわかりにくいものもあります。

そうした場合は、通知内にある財団法人テクノエイド協会のリンク先から同じデータをダウンロードしてみましょう。こちらのデータでは、商品コード(もしくは備考欄の「◯」印)をクリックするとテクノエイド協会内の福祉用具情報システムから、対象商品の紹介ページを見ることができます。このページでは、同じ分類での商品検索も可能なほか、システムのトップから大分類(例:移動機器)→中分類(例:車いす)という具合に目当ての福祉用具を探すこともできます。

しかしながら、一般の利用者にとっては、「自ら平均貸与価格や上限価格を調べよう」と思った際には、手間取ることになりそうです。特に、「これから介護保険を使い、福祉用具のレンタルを考えている」という人にとっては、自ら複数商品の平均貸与価格や上限価格を照らしながら、「選択のための材料とする」のは厳しいかもしれません。(ちなみに、テクノエイド協会の商品紹介で示されている平均貸与価格は、今回の価格データがまだ反映されていないものもあるので注意が必要です)

利用者の主体的な選択に資するしくみか?

さて、厚労省が設けている介護情報公表システムもそうですが、一般の利用者(あるいは、これからサービスを利用しようとする人)にとって、「自ら調べ選択する」という動機にはなかなか追いついていないのが現状です。

確かに、今回の平均貸与価格については、10月から福祉用具専門相談員から利用者への説明が義務化されました。ここに、「機能や価格帯の異なる複数の商品を利用者に提示する」という義務もプラスされているので、利用者にとっては一応選択材料が揃うことになります。ただし、それだけで本当に利用者の主体的な選択に資するのかといえば、まだまだ足りない部分が多いと言わざるをえません。

たとえば、先に述べたように、「これから介護を利用しようとする人」、もっと言えば「将来の介護保険利用に備えて福祉用具の情報を集め、おおまかな見積りを備えておきたい」という高齢層はますます増えていきます。

「それくらい積極的な人であれば、ネット検索も手慣れているし、現状のシステムでも十分に使いこなせるのでは」と思われるかもしれません。しかし、その発想では、「調べる意欲のある人だけ分かればいい」というハードルが前提となってしまいます。

消費者・被保険者の主体性を守るビジョンを

わが国に限らず「国の施策」というのは、「分かってくれる人だけ理解してくれればいい(介護保険についても、「申請意思がある人だけ申請してくれればいい」)という考え方と、「すべての人に分かってもらう努力を欠かしては、施策そのものの存在意義が問われる」という考え方が常にせめぎ合っています。

残念ながら、わが国の施策の多くは前者に傾きがちで、社会保障への信頼をぜい弱にしている要因の一端とも言えるでしょう。たとえば、北欧の福祉先進国などに比べて、消費税アップに否定的な見方をする人が多いのも、こうした土壌が影響していると思われます。

今回の福祉用具の件で言えば、消費者・被保険者の主体性を守るという視点がぜい弱である限り、そこに付け込んで不当な利益を得ようとする悪質事業者はなかなか減らないのではないでしょうか。10月からスタートする施策でも、「利益を上げるために(利用者にとって)不要な用具を次々と提案する」というケースまで根絶できるのかは疑問が残ります。

一つだけ言えるのは、「選ぶ」のはあくまで当事者であり、その部分を強くサポートするしくみが整っているかどうかです。そのサポーターとなりうるのが、利用者のパートナーとして機能するケアマネであり、そのケアマネに「利用者の主体的な選択をサポートする」だけの独立性(つまり、悪質な事業者に流されないだけの強い立場)を保障できるかどうか。この点も重要な課題となるはずです。

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