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事業状況報告から浮かぶ現場の苦境

2016年度の介護保険事業状況報告が公表されました。毎年度の要介護認定者数やサービス受給者数、介護給付費などを示したデータですが、今回は15年度改定の翌年の状況を見ることができます。今回の報告から、どのようなポイントが読み取れるでしょうか。

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一号被保険者の伸び自体は「ひと息」だが…

 まず注目したいのは、一号被保険者(65歳以上)の数です。今回の報告では、対前年度で1.7%の増加となっています。15年度データでは、対14年度で2.4%なので伸び率はやや鈍ったかたちです。内訳を見ると、前期高齢者(65~74歳)の数字に変化がないことが、伸び率が鈍った要因となっています。つまり、1.7%の伸びはすべて後期高齢者の増加によるものであり、15年に団塊世代が全員65歳以上を迎えた状況が反映されたわけです。

 一方、要介護認定者の伸びは1.9%、介護給付費(利用者負担を除いた額)の伸びは1.4%。一号被保険者の伸びとの差でいえば、前者がプラスなのは(要介護リスクが高まる)後期高齢者の割合が増えたことによると考えられ、後者のマイナスは17年8月より「一定以上所得者」に2割負担が導入されたことが影響していると思われます。いずれにしても、一号被保険者数の伸びと比較した場合の差異としてはそれほど大きくはありません。

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事業所数の伸び以上に利用者数が急伸!?

 問題なのは、サービス受給者数(1か月平均)の伸びです。こちらは7.4%増と、一号被保険者数の伸び、さらには介護給付費の伸びと比べて極めて高い数字となっています。この差はどうして生じているのでしょうか。

 内訳を見ると、対前年度比で地域密着型サービスが2倍近い伸びを記録しています。ちなみに、小規模型の通所介護が18年度から地域密着型へと移行しました。この点を考えると、実質的には通所介護を中心とした居宅サービスへのニーズ拡大が、受給者数の大幅な伸びに影響したという仮説も浮かびます。

 実際、16年度の介護給付費実態調査を見ると、要介護者対象の通所介護(地域密着型含む)の年間累計受給者数(名寄せをする前の合計)は約1800万人で、対前年度(15年度比)で約7.1%の伸びとなっています。先の受給者数の伸びと照らしてみても、先の仮説はおおむね実証されると言っていいでしょう。

 ただし、先の仮説が正しいとして大きな問題が浮かびます。16年度の事業所調査によれば、要介護者対象の通所介護事業所数は、地域密着型を含めて4万4101、対15年度比で1.6%しか伸びていません。つまり、先の類型受給者数の伸びを吸収するとなれば、1事業所あたり相当数の利用者増が必要となります。

 確かに、15年度の介護報酬改定では小規模型に厳しいマイナス改定となり、規模の大きい事業所運営への誘導が行なわれました。しかし、介護現場の厳しい人材不足の中で、適正な運営が果たして可能なのでしょうか。

医療費は減少したが、介護費は増加傾向

 仮に、通所介護がニーズの拡大吸収に四苦八苦しているとなれば、職員一人あたりの負担増は当然として、利用者一人ひとりの状態を見極めながらの個別機能訓練などを充実させる余裕はなくなります。国としては、自立支援型介護の強化を打ち出していますが、環境的には非常に厳しくなっているわけです。

 もう一つ注意したいのは、居宅・地域密着型サービスの類型受給者数において、通所介護以外でも伸びの著しいものがあることです。それが、訪問看護や居宅療養管理指導、定期巡回・随時対応型など、在宅において重い療養ニーズに対応するサービスです。

 お気づきの方もいるでしょうが、16年度といえば、診療報酬改定で入院医療から早期の在宅復帰を強化する改定が行なわれた時期です。その受け皿として介護保険における医療・看護の療養サービスも拡大しており、これも受給者数の増加に関与している可能性があるわけです。(ちなみに、同年度の医療費は介護給付費動向とは逆にマイナスとなっています)

 以上の点を整理すると、以下のような状況が浮かんできます。(1)後期高齢者が増えている割に、介護給付費全体の伸びは抑えられている。(2)医療・看護が介護保険に関与する傾向が強まる中で、通所介護等の介護系サービスにかかる給付はむしろ厳しくなっている可能性がある。(3)そうした中で、特に通所介護は「利用者の受け入れ拡大」で収益を上げようとし、現場職員の負担や自立支援に向けたケアの質との兼ね合いが厳しくなっている。

 こうした流れが、18年度の改定でどうなっていくのか。18年度のデータ公表はまだ先ですが、注視しておきたいポイントです。

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キーワード: 介護報酬 , 介護給付費実態調査 , 介護保険制度

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