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終末期をともに過ごすことの尊さを体感する - 馬場拓也氏 インタビュー vol.3

アパレルの世界ではトップセールスマンとして活躍し、ホスピタリティのマニュアルブックを制作するなど、「感動のセールス」を実践してきた馬場拓也さん。社会福祉法人へと仕事場を移してからも、「感動のホスピタリティ」を目ざす姿勢は変わらない。法人で看取りをした利用者やその家族に対し、「何ができるだろう」と模索し、制作したのが、法人で過ごした日々を映像でつづったDVDだった。特別養護老人ホームという場で出会った方と、どう向き合い、関係を築いていくのか。その理想の形を、自らカメラを回して世に伝えてくれるのだ。

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この特養で過ごしてよかったと思ってもらえる一歩踏み込んだグリーフケア

――馬場さんが撮影し、編集したDVD、『最愛の人を看取った後のご家族へ…「家族の知らないある日の出来事」』が、第1回中村ひろひこ賞*を受賞しました。これは、どんな作品なのですか?
*全国老人福祉施設協議会が主催

 僕らは社会福祉法人として、特別養護老人ホーム(特養)ミノワホームの運営をし、ご利用者に日々を過ごしていただいています。特養は、「終の住処」という位置づけで、ここで最期を迎える方もたくさんいらっしゃいます。ターミナルケアをさせていただくことも、ある種当たり前のことではあります。しかし、当たり前を超えたところで、ご利用者やそのご家族になにかできないかと考えました。

 特養というところは、たしかに最期を迎えていただく場所としてはふさわしいと思います。我々も、最高の時間を提供するという目標を掲げて努力をしています。しかし、「特養に入りたい人!」と呼びかけたときに、「ディズニーランドに行きたい人!」と聞かれたときみたいに、みなさんが「はーい!」「はーい!」と手を挙げるわけではありません。

 ご本人は、「こんな体になってしまったから」「家族に迷惑をかけるわけにいかないから」と自分を納得させる。ご家族も、「本当は家でみるべきなのに…」と思いながらも、仕事などの都合で、家で介護ができない状態だからと、選択する。特養は「泣く泣く入る」場所であることに、目をつぶってはいけない。そこは自分たちへの戒めの意味で、勘違いしてはいけないと思っています。

 そんな前提をよく肝に銘じたうえで、ご利用者の日常をお伝えしようと思ったのです。ご家族が見ていないところで、ご利用者が楽しそうに笑い、数十年来の友人と交流を交わす。そんな特養での日常を切り取り、1本のDVDに編集してお贈りしています。

 グリーフケアという言葉がありますよね。悲しみを拭うケアという意味で、看取りの後、愛する方を失ったご家族に対して行うケアのことをさします。このDVDがグリーフケアの一端になってくれれば、という思いでした。つまり、DVDを観て、ご家族が「おばあちゃん、楽しそうに笑ってる。家ではとてもじゃないけど、こんなふうにはいかなかった・・」と納得してくださる。そのことが、愛する家族を失ったご家族の悲しみを拭う一助になるのでは、と考えたのです。

 それによって死を受け止めるのが1ヵ月先なのか、1年先なのか、5年先になるのか? それは私たちが計れることではありません。しかし、人生のエンディングへ向かう日々を共に過ごさせていただいた私たちだからこそ、いえむしろ、私たちでなければ、できないことでもあると思ったのです。

 けっして、珍しいことをしたわけではありません。ほかのホームでも、同様のことをやっているのかもしれない。ただ、僕がこだわったのは、ご利用者のお顔を、正々堂々と使わせていただくということ。よく、変にリスクを考えて、顔にモザイクを入れたり、後ろ姿しか撮さないようなことをしますけれど、そういうのは好きじゃない。そして「介護業界のために、あのDVDを発表したいのです」と正直にご家族にお願いをし、正面からご利用者と向き合ったところが、よかったのかもしれません。

次のページは・・ 介護は感情のスイッチを入れた状態で接していいのでは?

キーワード: 特別養護老人ホーム , 看取り , 人手不足

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