介護職の想いをつなぐ介護職のウェブマガジン

「自分が住みたい」サ高住を造る - 下河原忠道氏インタビュー vol.1

「見学に行ってみたいサービス付き高齢者向け住宅はどこ?」と聞かれたら、介護業界人がおそらく真っ先に思い浮かべるのが、下河原忠道さんが運営する「銀木犀(ぎんもくせい)」だろう。センスのいいインテリア、癒しの環境音楽、おいしい食事、本気で楽しそうなクラフトワークプロジェクトクトやドラムコミュニケーションプログラムといった音楽療法。他のホームとは一線を画するおしゃれ度に驚く。だが、「おしゃれ」が下河原さんの目的ではない。入居者が自分らしく自然に生活できる環境。「世話してあげている」のではない、「自分で生きて、納得して人生を終える」ための居場所。それを、命をかけて実現しているのだ。明るく親しみやすい笑顔の内側に潜む、熱い「介護魂」をうかがってみた。

関連サイト:忠道通信

関連サイト:銀木犀

関連記事:(株)シルバーウッド

地震国の日本は建築・構造基準が厳しい

――下河原さんは若いころ、お父様の薄鋼板を加工する会社を手伝っていらっしゃったそうですが、どのような経緯から、介護業界で活躍することになったのですか?

 父の会社はいわゆる「鉄屋」で、薄い鋼板を車のボディや家具向けなどに加工して販売する工場です。僕は主にその現場で働いていました。5年ぐらい働いたところで、起業したいと思いまして。父の会社の鋼板を構造力学上もっと強いものにして、三階建てまで建てられる住宅建材としての構造システムを構築しようと決心しました。

 アメリカのスチールフレーミング工法を学ぶために渡米、工法を学んで日本に持ち帰って「スチールパネル工法」という名前で特許を取りました。その薄板軽量形鋼造の構造設計、構造パネルの製作、販売、施工、施工管理や住宅の企画・運営などを行う会社を設立したのです。それが(株)シルバーウッドです。薄板軽量形鋼造は一般の重量構造同等の強度があり、安価に作れる。重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて10%も安くなるので、大きな物件なら1億円節約できる、というケースもあります。自分の中では、「これはイケる」という感触がありました。

 ところが、ぜんぜん売れなかった。というか、売る以前に、日本は地震大国ですから、構造の耐震基準がとても厳しくて、認可がなかなか下りないんです。すべての大臣認定を取得するまでに7年の歳月と、2億円以上を費やして、当時の僕はやせ細っていました(笑)。

 ちょうど認可が下りたころ、琵琶湖のほとりで高齢者向けの賃貸住宅、当時「無届けホーム」なんて呼ばれていた住宅を作ろうと思っていた方に、「安く造れるなら、お前のところのを使ってやる」と言われました。うれしかったですね。

 しかし、でき上がって見学に行くと、愕然としました。狭い部屋、トイレも洗面もないし、窓もすごく小さい。こんな牢獄みたいなところに、おじいちゃん、おばあちゃんが住むのかと思ったら、切なくなってしまって。その後も特養や療養型の病床を見学に行ったんですけれど、劣悪な環境のところも目について。ある療養病床では、止まろうとしているエンジンに、無理やりガソリンを突っ込むように、寝ている高齢者に管を入れて輸液をジャンジャン運んでいる。管でつながれてベッドに寝かされている人たちは、むくんだ身体と悲痛な顔で、天井一点を見つめていて……。「虐待でしょう、これは!」と腹が立ってしかたがなかった。「その人らしく生きる」ということと、まったく逆行しています。その後、世界のさまざまなホームを視察しましたが、日本のこの状態は本当にひどいと思いました。

 それなら、自分が高齢者住宅を造ろう。心地よく暮らせて、安心して死ねる住宅を、と。それがきっかけでした。現在、4つのサービス付き高齢者向け住宅と、2つのグループホームを運営しています。

次のページは・・ 「介護してあげる」のではなく「共に住む」

キーワード: 看取り , サービス付き高齢者住宅 , 認知症

この記事はいかがでしたか?感想を残そう!

この記事の感想は?

大賛成 3
賛成 0
中立 0
反対 0
大反対 0

== オススメ介護求人 ==

みんなのコメント

コメントをもっと見る

こちらの記事もどうぞ

  1. 該当する記事はありません
ページの先頭に戻る