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選択の自由がある「居場所」づくりに - 下河原忠道氏インタビューvol.2

下河原さんが運営するサービス付き高齢者向け住宅「銀木犀(ぎんもくせい)」の入居者さんは、年齢を重ねているのに、若々しく見える。それは、よく笑い、よく動くからかもしれない。洗濯物をたたみ、配膳をする。したい人はキッチンで料理もする。「お世話する」という感覚ではない。入居者さんが自分がやりたいことをやるための支援をしている、まさに「自立支援」を確立しようとしているのだ。その上に、高齢者に収入を得てもらおう、という目論見もある。「うちはブラック企業を目指してます」と笑う下河原さんの言葉の真意を、じっくり聞いてみた。

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できることはすべて入居者が自分で

――銀木犀の入居者さんは、よく動く、という印象がありますが・・。

 我々は、「できることを取り上げない」ようにしています。自宅にいたときは、ちょっとしんどくても洗濯や掃除、食事作りなどもしてきたはずなのに、ここに来たら上げ膳据え膳では、ね。靴下まで脱がせてくれるデイサービスがあると聞きましたが、言語道断です、「自分でやれ」って言いたい(笑)。

 もちろん、介護度の高い方は、できないことも多いかもしれませんが、できる方には、部屋の掃除もやっていただく。ごはんも、ご自分でお櫃からよそって、配膳してもらいます。「自立支援」なんておこがましいですし、まだまだですが、できることを取り上げるのは違うと思っています。

 銀木犀 薬園台の共有部では、DVDで映画を観るためにテレビを使うことはありますが、ふだんは使いません。よく、入居者さんをテレビの前に集めて座らせて、リモコンをピッてやって、職員がどこかに行ってしまうケースを見るでしょう。残された方々は、為すすべもなく、ぼんやりと画面を見ている。あれは認知症をすごく進めますからね。考えることをやめてしまいますから。テレビは認知症の人たちに対して悪い環境ばかりを作っていると、最近思うようになりました。

 それとともに、「選んでもらう」ことを大事にします。バイキング方式をたびたびやって、自分が食べたいものを、食べられる量だけ食べる。生きがい向上プログラムや在宅療養支援診療所の医師も自分で選ぶ。医師は3つぐらいのクリニックをご紹介して、「この先生は麻酔がすごく上手」「この先生は人情味あふれる先生」などと説明をして、ご自身で決めてもらっています。

 何にせよ、選択の自由がなければサ高住じゃない、と思っていますから。選択をすることは、生きることの基本でもあります。

 僕は、入居のときの面談で、ご本人に「本当にここに住みたいですか?」と聞きます。たいてい、住みたくないって思っています。家族が疲弊してまたは心配して連れてきた、というケースが多いですし、自身も家族に迷惑をかけたくないから、泣く泣くやってきた、ということが多いですよね。まず、そこで選択の自由はなかったわけです。それなら、入居してから選択していただこうと。

 入居すると、ホームのルールに従って生活するのが当然、と思ってしまいますが、入居者側からみれば、行きたくない場所に連れてこられて、やりたくないことをやらされている。認知症の方なら特に、わけもわからずいきなり服脱がされて、「さあお風呂」って知らないお風呂に入れられたら、相当怖いと思うんですよ。だから、うちでは、「入浴したくないというのなら、絶対に入れちゃだめだよ」と言っています。ごはんだって、お腹がすいていないなら、一回ぐらい抜けばいい。その後、お腹を空かせておいしく食べたほうがいいじゃないですか。

――「尊厳」の実践をどうするか、ということですね。

 あるとき、うちで健康体操をやってくれるパートの女性が、入居者さんの前でこんなことを言っていたんです。「さあ、みなさん、こんにちはー! 今日は何曜日? 木曜日、わーすごーーーい! 明日は何曜日? 金曜日、正解! まだここに住めますよ」って。俺、カチンときちゃって(笑)。「ちょっと待て、だれに向かって口きいてんだ」と。バカにしてると思いませんか? その女性は長いあいだ福祉の世界でやってきた人です。長くやってきた人ほど、そうなってしまうことが多い気がします。でも、きちんと言ったら、わかってくれた。「知らず知らずのうちにそうなっていました」って。よかったですよ。

 「来たくなかった」入居者さんに、「まあ、ここに住んでもいいか」「いや、ここが終の棲家」と思ってもらうまで、2年ぐらいかかるケースは多いです。それが当たり前だと思っていますし、「終の棲家」と思ってもらえるように、こちらも同じ目線で生活していかないと、と思っています。

次のページは・・ 何歳になっても働いて収入を得る

キーワード: 看取り , サービス付き高齢者住宅 , 認知症

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