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介護福祉職におけるモラルとコンプライアンス

介護職員として、さし当たりできることを見つける姿勢もまた介護

 糖尿病で食事制限の指示がある方から、間食に「お菓子が食べたい」とお願いされたとき。「身体が凝ったのでマッサージをしてほしい」と頼まれたとき。深夜に「自宅の家族に電話をかけてほしい」と頼まれたとき。一人の介護職員として、どのように返事をするのがよいのでしょうか。どのお願いごとも、介護職員の判断で「わかりました」と言えないことばかりですが、このような経験をされた職員は少なくないでしょう。

 認知症を生きるご利用者から、ということもあるかもしれません。どのように対応すべきなのか。ロボットのように「それはできません。決まりですから」と告げるのか。コンプライアンスに抵触しながら「わかりました、やりましょう」と答えるのか。

 私が思うに、このような案件では、その場ですぐに明確な答えを出すことは、得策ではないということです。介護職員がご利用者からお願いごとをされるとき、それはすなわち相談を受けているということに言い換えられます。できないと相談を受けてすぐに断るのは、もはやそれはケアでないと思います。かといって快諾もできない。

 では、「一緒に悩む」のはどうでしょうか。マッサージはできないが背中を擦(さす)りながら会話することはできるかもしれない。深夜に電話はできないが理由を聞き、同調することはできるかもしれない。

 ご利用者と一緒に悩み、折衷案を探すことが答えとして成立することもあるはず。ここで役に立つのはコンプライアンスよりもモラルのほうです。白か黒かだけでなく、個々に合ったグレーの着地点を探す。これも、介護職員の専門性として求められることのように思います。「ロボットに介護ができるか」というような議論をたまに見かけますが、ことグレーを探す能力に関しては、まだまだ人間に軍配が上がりそうです。

介護福祉職が目ざすべきコンプライアンスは、マニュアル人間ではない

 コンプライアンスを遵守することは、組織に属する介護職員としては当然のことです。私の勤める特養で以前あった話ですが、あるご利用者が転倒され、顔にアザができました。ある職員がタブレット端末で写真を撮ろうとしました。顔のアザを職員間で共有するためです。しかし、当のご利用者は「それは嫌」と拒否されました。

 タブレット端末は確かに便利であり、撮影した写真データを社内用の記録ソフトに添付すると、全職員が閲覧することができます。この当時は、社内マニュアルが追いついていない事情もあって、ご利用者への撮影許可がないがしろにされてしまうこともありました。

 「怪我の把握」「事故を予防したい」などさまざまな理由があるにせよ、ご利用者が「撮影されるのは嫌」と仰る以上、優先すべきことは明確です。タブレット端末など、技術やツールの幅が増え、介護現場も日々変化しています。既存のマニュアルでカバーできない事案が発生したときに問われるのは、職員個人のモラル、倫理観となるでしょう。ご利用者の気持ちに寄り添い、物事を考える力を養わなければ、介護の未来は無機質で温かみのない世界となってしまう気がします。

 現場のICT化や、職員のマネジメント方法もさまざまに確立されてきた現代の介護福祉業界。今一度、介護福祉職としてのコンプライアンス・モラルを考えることが、求められるのではないでししょうか。

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キーワード: コミュニケーション , 介護スキル , 介護保険制度

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