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埋蔵薬について考えてみよう

「埋蔵薬」という言葉を、聞いたことがあるでしょうか。医師が処方して患者さんの手元に渡されたものの、飲まれずに残ってしまっている薬です。現在私は訪問介護の仕事をしている中で、「薬を飲ませてほしい」と頼まれることがあります。そんな依頼のあるお宅には、袋に入ったまま大量に「何年分あるのか」と思われるほどの薬が、山積みになっていることが珍しくありません。中には、段ボールにひとまとめになっていたなんてことも。そんな「埋蔵薬」について考えてみましょう。

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いつのまにか溜まっている残薬

 「与薬」という行為は厳密に言うと医療行為に当たるため、ヘルパーが行ってはいけません。しかし1回分に分包してあり、日付と名前が書いてある薬を飲むように促すことは、業務上において差し支えありませんのでお受けします。薬は飲まなければそのまま放置され、いずれ捨てられてしまうのです。

 中には私たちの目の前で、「これからはきちんと飲めるようになるから、分からなくなっちゃう前に古い薬は捨てちゃおう」と、薬を廃棄してしまう家族も見られます。そのたびに私の中で、「あぁ、これは税金の無駄遣いだ」といたたまれない気持ちが。それでは、なぜこんなに残薬がでてしまうのでしょうか。

縦割り医療

 ひとつの原因として考えられるのが、縦割り医療です。お年寄りに限らず、多くの人は複数の医療機関を利用します。風邪をひいたら「内科」、腰痛があれば「整形外科」、そして歯が痛くなったら「歯医者」さんへ。そして、それぞれの医療機関でお薬を出されるでしょう。すると、どんどん薬の量が増えていきます。

 医薬分業となり、ほとんどの医療機関では院外処方を行っています。しかし大抵の場合は「門前薬局」があり、受診した医療機関毎に、別々の薬局で薬を受け取っているはずです。原則は「お薬手帳」を持参し、今回処方された薬以外にどんな薬を飲んでいるのかを薬剤師に見てもらったうえで、重複した薬があれば医師に相談します。そうすれば、飲み合わせの悪い薬の発見や、飲み過ぎを防ぐことができるというシステムです。

 しかしこのシステムが、残念ながら「絵に描いた餅」状態になってしまっています。つまり「お薬手帳」を持参しなくても、薬は処方されているのです。

治癒期間の長さと費用負担

 次に問題として挙げられるのが、「高齢者は治癒までに時間がかかる」ということ。風邪は長引き、腰痛はほぼ完治しない。歯の治療では長い時間口を開けていられないので、少しずつ治療することになるでしょう。仕方のないことではありますが、その間にも薬は出され続けます。すると、飲み忘れの回数が増えてしまうのです。

 1週間で2回飲み忘れても、2週間で完治すれば4回分の薬が残るだけです。しかし1ヶ月・2ヶ月と長引けば、その分だけ薬は溜まっていきます。そしてお年寄りは、そのことを気にはとめません。なぜ気にとめないのか。その理由として、料金が挙げられるでしょう。私たちは保険料を納めるほか、医療機関を受診して投薬されれば、3割負担でその費用を支払います。しかしほとんどのお年寄りは、これが1割負担です。そのため、あまり高額だと感じないのでしょう。医師に対し、例えば「飲み忘れの薬があるので、○日分減らしてほしい」などと申告することはありません。

 また、医療に対する感覚の違いもあります。たくさんの痛み止めが残っているお年寄りに「こんなにたくさんあるのだから、『いりません』と話したらいかがですか?」と伝えてみると、「せっかくくれるのだから」という答えが返ってきます。あるいは「血圧の薬が残っているから、次の受診時に調整してもらうように」と助言すれば、「飲んでいないことを先生に話すと叱られちゃうから」とおっしゃいます。これは、痛み止めのケースと違って危険なことです。

次のページは・・ 飲み忘れを申告する意味を考える

キーワード: , 介護家族

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