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認知症の周辺症状について

認知症には、「物忘れや見当識障がいといった中核症状といわれるもの」と「不穏やイライラといった周辺症状」があります。アルツハイマー型認知症、あるいは脳血管性認知症にしても、つまり脳の細胞に何らかの異常が生じる病気です。そのため、生活する上で不便な症状が出てきます。今回は、そうした認知症における周辺症状について見ていきましょう。

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認知症の中核症状

 例えば骨折や発熱といった病気でも、生活上で不便なことには変わりありません。しかし認知症の場合、本人にその自覚がないというところが、他の病気と大きく違うところ。よく言われる物忘れも、「あれ、何を取りに来たんだっけ?」という状態なら家族や周りの人に迷惑をかけることはないでしょう。しかし認知症による物忘れの特徴は短期記憶障がいというもので、直前のことを忘れてしまいます。よく「何度も同じことを言う」というのはこの症状で、中には10分程度の間に20回も30回も同じことを繰り返してしまうのです。例えば、

 「随分と暖かくなってきたので、もうマフラーも手袋もいらないと思っているんだけど、不安でいつもの格好で出掛けてしまう。そうすると、今度はどこかに置き忘れるのではないかと不安で、汗をかいてもマフラーが取れなくてね」

 「そうですね、暖かくなってきましたね」

 「暖かくなったとはいえ、出掛けるときはついマフラーも手袋も手放せなくてね。そうすると、今度は忘れちゃいけないと思って……」

 等とエンドレスに続きます。これは、頭の中に「忘れ物をしては不安だ」という気持ちがあるので、何を話してもそこに話が戻ってしまうわけです。つまり、言葉に出したこと自体を忘れてしまうのですね。これが、短期記憶障がいという『中核症状』です。

次のページは・・ 受け答えの内容で周辺症状が悪化することも

受け答えの内容で周辺症状が悪化することも

 認知症を理解してもらおうという取り組みとして、冊子などではよく食事が例に挙げられています。例えば、食事を終えたばかりなのに「ごはんはまだですか?」と言ってくる。これは話す内容だけでなく食事をするという行為も伴っているので、「あれ!おかしいぞ」と気付くのに解りやすい例でしょう。話だけが繰り返されるといった症状の場合、高齢者の方には念を押して何度か話すといった行為がよくあるため、なかなか短期記憶障がいだと判断しにくいものです。

 その他に短期記憶障がいで多く見られる行為・行動として、「1日に何度も電話をかける」「短い時間に何度もトイレに行く」といったものがあります。電話をかける行為は、今、受話器を置いてすぐにまたかける。トイレに行く行動は、トイレから戻り座るか座らないうちにまたトイレに行くといった具合。つまり、以下のような形です。

  • 電話をかけて手に受話器を持っているが、電話をかけて話したことは既に忘れている
  • トイレを済ませて戻ってきたことを忘れ、「立ったついでにトイレに行っておこう」と考えてしまう

 いずれの症状・行動も、全て本人は“忘れていることを忘れている”状態。理解していませんので、次のような言葉には気分を悪くしてしまいます。

 「同じ話を何度も聞いたよ」→「同じ話なんかしてない」

 「ごはんは食べたばかりだよ」→「ごはんは食べていない」 など

 そして、これが周辺症状をさらに悪化させてしまいます。つまり、「何度も同じ話ばかりしているよ」とか「食べたことを忘れちゃったの?」といった話の内容もすぐに忘れてしまう。そして、何か自分の意にそぐわないことを言われた、気分の悪くなるようなことを言われたという感情だけが残ってしまうのです。

 それでも周りの人にとって、例えば1日に何十回も電話がかかってきたのでは生活に支障があります。また、トイレの水を流し続けられたのでは、経済的にも大変でしょう。ですから、つい

 「もう電話をかけてこないでちょうだい!」

 「いったいトイレへ何しに行っているの!」

 など、語気強く言ってしまいがちです。それも当然のことでしょう。しかし、それこそが周辺症状を顕著にし、いずれは中核症状をも悪化させてしまう対応なのだと理解してほしいのです。

次のページは・・ 対応の仕方が進行速度に関係する

対応の仕方が進行速度に関係する

 不穏やイライラは、認知症を悪化させます。認知症は“非可逆性”の病気。1度発症すれば完治することはなく、改善させることも不可能です。また、今の医学では進行を止めることもできず、進行の速度を緩めるといったところまで。そして進行の速度を緩めるためには、薬による中核症状に働きかける治療と周辺症状に対する対応の仕方がとても有効です。忘れていることを忘れる、あるいは何に対して叱られているのかが分からない状態ですから、本人に「なぜ? どうして?」と責め立てても無意味なのです。

 同じ話を繰り返されたら、時間の許す限り何度でも「うんうん」と聞いてあげる。何度も食事を要求されても「今準備しますね」と穏やかに繰り返す。電話はナンバーディスプレー等を活用し、出られないことがあっても大丈夫なよう工夫してみる。あるいはトイレなら、面倒でも元栓を閉めるなど。本人は「あれ、変だな」と思うかもしれませんが、こうした何らかの対策を試みてみると良いでしょう。

 もっとも大切なのは、対応する側がイライラしないこと、こちらのイライラがあちらに連鎖してしまいます。 ヘルパーとして訪問していると、滞在中に同じ話を聞き続けることは珍しくありません。仕事ですから当たり前に穏やかに聞けますが、家族はなかなかそうもいかないもの。それでも知識として、「責めても叱っても意味がないのだ」ということ、また、それは反って症状を悪化させてしまう行為なのだということをお伝えしています。

 また、施設介護に携わっている職員なら、ヘルパーのように1日数時間の訪問介護とは異なり、勤務中ずっと同じ話ばかりでうんざりする方もいると思います。それでも、穏やかに接することが自分の仕事・役目なのだと考えてみてください。症状が悪化すれば理解できない行動がさらに増えてしまい、かえって業務が混乱してしまうのだと捉え、認知症の人に接していただきたいと思います。

 認知症は非可逆性の病気ではありますが、対応の仕方によって随分と症状の進行を抑えられるもの。その理解を持って、日々認知症の皆さまと接していきたいものです。

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キーワード: コミュニケーション , 介護家族 , 認知症

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