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高齢者のリハビリについて

リハビリテーションについて調べてみると、国連の障害者に関する世界行動計画(1982)によれば、「身体的、精神的、社会的に最も適した生活水準の達成を可能にすることによって、各人が自らの人生を変革してゆくことを目的とし、且つ時間を限定した過程である」とあります。これを噛み砕いて理解するならば、障がいを負っている人が生活するための環境の全てを、リハビリテーションと言っているのだと思います。 今回は、そんなリハビリについて高齢者介護の視点から考えていきます。ただ単純に身体機能の回復のためのアプローチだけではなく、自らの持てる能力を全て活かしても生活に不具合が生じるのであれば、「リハビリテーション」にはそれに対する環境整備や人々の理解も含まれるのではないでしょうか。これは、「ノーマライゼーション」の考え方にも通じるものです。それでは高齢者にとって「もっとも適した生活水準の達成」とは、どういうものなのか。ここで考えてみたいと思います。

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リハビリへ前向きに取り組めない

 リハビリテーションが必要になるのは、当然ながら高齢者だけに限りません。病気や怪我によってこれまで有していた機能が一時的または半永久的に不良となり、それを回復させるために行う必要が生じます。ここでは高齢者が寝たきりになる原因として多い、骨折を例に考えてみましょう。

 高齢者の骨折は腕や足ではなく、背部の圧迫骨折が多いのが特徴です。若い人にとっては考えにくいことですが、尻餅をついただけ、あるいはくしゃみをしただけで背中の軟骨が潰れてしまい、圧迫骨折と診断されることは珍しくありません。次に目立つのが大腿骨剄部骨折、いわゆる太股の付け根の部分が折れてしまうものです。大腿骨剄部骨折の場合は手術を行い、人工骨で修復して一応は歩行可能な状態の形をとります。しかし背部圧迫骨折には外科的な手術の方法はなく、安静にして痛みがとれるのを待つしかありません。

 どちらの骨折も骨粗鬆症が大きく関係していますので、治癒には時間がかかります。若い人であれば骨折部位をギプスで固定し、他の部分の筋力低下を防ぐため、すぐにでもリハビリが開始されるでしょう。しかし高齢者の場合、損傷した部位を庇う部分も弱ってしまっていますので、なかなかリハビリを開始できないという問題があります。また、身体的問題だけでなく精神的問題も大きなものです。

 ごく稀に70・80代の方でも「頑張ってリハビリをして元の生活に戻るぞ!」という気力を持った方がいますが、大半の方は「こんな体になってしまった……」というショックが大きく、なかなか前向き・精力的にリハビリへ取り組めないのが現状です。 それでも、いつまでもじっとしていたのでは、本当に寝たきりになってしまうという気持ちがあります。そのため、少しずつは動くように心掛け、OT・PT・看護師やドクターの手を借りて、ゆっくりリハビリを行うことになるでしょう。

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心理的アプローチの重要性

 高齢者のリハビリで大変なことの1つは、心理的アプローチだと思います。もちろん高齢者でなくても、リハビリを行いながら「本当に元に戻るのだろうか、元の生活ができるようになるのだろうか……」という不安は誰もが抱いていることでしょう。それでも、若ければ若いほどその成果は目に見えやすく、その目に見えた成果によって次のステップへと力強く進めるものです。

 しかし、高齢者はなかなか成果が目に見えず時間が過ぎていきます。すると焦りが出てしまい、時には投げやりな気持ちになってしまいます。入院期間が長くなり、慣れない狭い空間での生活や病院で提供される食事に不満が募る。行動範囲も少ないため、食欲も落ちてなおさら回復が遅くなってしまう……という悪循環になりやすいのです。ですから、高齢者へのリハビリでは身体的なアプローチよりも、精神的なアプローチにこそ気を使う必要があるのではないでしょうか。

 焦る、落ち込む、投げやりになる、腹立たしく思う。あるいは「ひょっとして、もう自分は家に帰るのは無理かもしれない」「トイレにも一人で行けないなんて、なんて情けないのだろう」「みっともなくて、こんな姿は誰にも見せたくない」など、そんな考えが頭をよぎってしまうものです。

 回復がゆっくりな分、その気持ちをコントロールしなければならない期間も長くなります。そのため、 「時間はかかるかもしれないけれど、何もしなければ悪くなる一方なのだ」「まったく元通りにはならないかもしれないけれど、努力すれば家に帰って自宅での生活が可能になるのだ」と優しく励ましながら、機能回復を手助けすることが重要だと思います。そしてこのアプローチは、退院後に自宅へ帰ってからも重要な部分です。

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リハビリにおける介護職の役割

 病院では24時間、専門職のフォローがある中で生活していました。しかし自宅では、たとえ家族が一緒に暮らしていても専門職ではありませんので、そういった接し方は難しいものです。手引きや歩行ひとつにしても、慣れた専門職が行うのと家族が行うのとでは随分と違いがあります。また、 家族とはいえ24時間いつでも必要なとき、常にそばにいられるわけでもありません。

 ある程度機能が回復して自宅に帰ってからは、生活リハビリが必要になります。OTやPT、訪問看護師による訪問リハビリの他に、生活面でのリハビリには介護職の役割も大きいでしょう。なぜなら機能の衰えた部分への直接的なアプローチではなく、不自由な部分があっても工夫次第で人の手を借りずに生活する知恵を持っているからです。また、毎日たくさんの高齢者と接する中で、その心理も理解しています。ゆっくり話を聞いて優しく励まし、生活の中で元気になるための言葉かけを得意としているのです。

 高齢者でなくても怪我をしたり入院・療養・リハビリが必要な状態になったりすれば、落ち込んだり焦ったり、不安になったりするものです。高齢者は特に回復が遅く、また、他に持病がある人も多いことから、アプローチには工夫と技術が必要でしょう。医療と介護の両面から上手に関わり、少しでも社会復帰のお手伝いができたらと思います。

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キーワード: リハビリ , コミュニケーション , ヘルパー

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