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歯がゆい介護保険

介護保険制度は、介護を必要とする人とその家族に手を差しのべる制度です。家族に介護を必要とする人がいると、その介護のために仕事を変えたり、中には退職を余儀なくされたりする場合もあるでしょう。もしかしたら「仕事を辞めてまで介護するくらいなら、施設に入所してもらえば良いじゃないか」と考える方がいるかもしれません。しかし金銭的な問題や、状態によっては受け入れてくれる施設がないなどのケースもあるのです。それだけでなく、介護保険制度には細かな制約があり、時として痒いところに手の届かない歯がゆい思いをすることも。そんな歯がゆさを、事例をもとに取り上げていきます。

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金銭面から施設ではなく在宅介護を選択

 それでは早速、具体的な事例をご紹介します。85歳のAさん(女性)は2年ほど前に軽い脳梗塞を患いました。本来であればリハビリでほぼ元の状態に戻れる程度の症状だったのですが、以前より認知症の症状が顕著でありリハビリを行うことが不可能。そのため、あっという間に寝たきりの状態になってしまいました。

 約半年間は同居していた夫が主介護者としてある程度のことを行い、日中のオムツ交換や食事の介助はヘルパーに依頼していました。また、受診や緊急時の対応は、同市内に住む長女が行っていたのです。しかし、Aさんが寝たきりになって半年後に、主介護者だった夫が急死。長女は悩んだ末、Aさんを自宅に引き取りました。このとき施設入所も考えたのですが、「金銭的に続かないだろう」と判断したのです。

 子育ては、将来にある程度の目処を立てられます。幼稚園や保育園から始まり、高校、大学と進学するにしても、かかる年数や金額はある程度の予定が見えることでしょう。しかし、介護はそれができません。悲しい表現ではありますが、いつまで続くか分からないのです。そして診ている子どもたちも、少しずつ年をとっていきます。

 Aさんは娘さんの家に引き取られ、ヘルパーの印象としては「とても幸せそうで良かった」と感じました。認知症のため、娘に向かって「あなたは誰?」なんて問うようなこともたまにあります。しかし、家の中でもっとも陽当たりの良い部屋で、快適に過ごしていらっしゃいます。

 娘さんは1日に数時間は仕事に出掛けますが、朝起きた際、そして夜寝る前には顔を見て声をかけるとのこと。家族と過ごせるということは、何よりも本人の情緒にとって施設より良い環境なのだと感じます。

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骨折後の通院に介護サービスが使えない

 ヘルパーは娘さんが仕事に出ている夕方、毎日訪問してオムツ交換と夕食の介助を行います。そんな中、Aさんが先日足首を骨折してしまいました。原因は不明。 あまりに足が痛いと訴えるので、整形外科を受診したところ右足首の骨折があったそうです。

 寝たきりの生活が長く、また食も細ってしまっていることから、症状の改善は大変に遅い状況。1ヶ月が過ぎても、まったくギプスの取れる気配がありません。そんな中、今度は娘さんが転んでしまい、左足の小指を骨折してしまいました。娘さんによれば、痛めてみてもっとも驚いたことは、「この部分にこんなに力が加わっていたのか」ということだそうです。身体のごく一部、足の小指1本を痛めただけでこんなにも動きが悪くなり、生活が不便になるなんて予想もできなかったと言います。

 自分自身が歩くのにも、何か支えてくれるものがなければ歩けません。そのため、Aさんの日頃のお世話はとても無理だと判断し、Aさんを1ヶ月間ショートステイに預けることにしました。ここで問題になったのは、ショートステイの利用期間中、整形外科への受診は誰が行うかということです。

 施設側では入所された利用者さんについて、「施設が受診の介助を行うが、ショートステイ利用者は在宅扱いなので受診は家族に行ってほしい」とのこと。しかし娘さんは車の運転こそできるものの、Aさんを乗降させることができません。しかしヘルパーの行う福祉有償移送は、ショートステイ利用中には使えないのです。そう、介護保険では、ショートステイ利用中や入院期間中はヘルパーの派遣は認められません。あとは、民間の介護タクシーを利用するしか方法がないのです。

 Aさんの場合、出掛ける際にはショートステイ先の職員が手伝ってくれます。そのため、整形外科医院での昇降の手伝いさえあれば、高額な介護タクシーを利用しなくて済むのです。しかし整形外科医院に打診してみたものの、良い返事はもらえなかったと言います。個人の医院では、まだまだ介護について理解を得ることは難しいのでしょうか……。

 その他にも、毎週ではなく一定期間のみ隔週にしてみるなどご提案を差し上げましたが、娘さんは「それはできない」とのこと。介護を必要とする人とその家族を助けたいという介護保険制度ではありますが、まだまだ課題は多く、やはりお金がかかるのだという歯がゆい思いを経験しました。

 Aさんについては、結果的に介護タクシーを利用したことで安全に移送・受診することができ、娘さんは喜んでくださっていました。しかし、やはり費用は痛かったようです。何もかも制度でまかなうことは無理かもしれません。しかし費用の助成等でもあれば、少しは違ったのではと感じた事例でした。

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キーワード: 在宅 , 介護家族 , 介護保険制度

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