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地域で支えるとは言うけれど…

食べ物にも強いこだわりが

 火を使うのは危険と判断し、食べ物はすべて買って済ませています。しかしお金に余裕があるわけではないので、パックのご飯と納豆だけということも少なくありません。この納豆を食べるのにも自分なりの決まりがあり、30分かき混ぜないと食べられないのです。

 「なぜ30分もかき混ぜないと食べられないのですか?」」と聞くと、「そういう決まりだから」とのお返事。結局、混ぜるだけで疲れてしまい、食べること自体が嫌になってしまうこともあるのです。

 Aさんはデイサービスを週2回利用しており、その際の食事は全て召し上がっているとのこと。 このような性格や生活ぶりなので、あまり自分から外へは出ないのかというと、そうでもありません。年に1度の老人会や、地域でのカラオケの集いなどへは喜んで出席しています。

 ただ、出向いた先での交流はほとんどないそうです。デイサービスでも塗り絵や折り紙等を行っており、周囲の人とおしゃべりを楽しむようなことはあまりありません。

地域支援を受け入れることの難しさ

 ある日、Aさんがケアマネジャーに「家の前を通る人に挨拶しても、誰も私の声かけに応えてくれない」と話しました。会議でこの話を聞いた人たちからは、「このような性格では当然だろう。みんな避けているのではないか?」という意見が大多数。しかしAさんに難聴があることから、会話が成立しにくいということも原因として考えられるため、補聴器使用を検討してはどうか、という意見が出されました。

 そこで翌週、ヘルパーが補聴器の利用を提案したところ、補聴器はすでに持っていたのです。もちろん会議での話は本人には伝えず、「耳がよく聞こえるようになれば、近所の人たちともっとお話ができるようになるのでは?」と伝えたところ、Aさんからの返答は次のようなものでした。

 「これを使うと雑音まで大きな音で聞こえちゃってうるさくて嫌なのよね。それに、近所の人には私からちゃんと声をかけているよ。だけど、あちらが知らん顔するんだよ!」と。

 地域ケア会議では、利用者名を出さずに事例検討をしています。そのため出席者も具体的にどの人のことなのかはわからないはずなのですが、Aさんの事例があまりにも突出していたため、ある民生委員が「これはAさんのことだな」と気づいたようです。そして会議で「近所の人達はAさんにちゃんと挨拶を返していますよ」と言ったのです。ということは、Aさんが感じている疎外感は、難聴のせいでもあるものの、Aさん自身が受け入れているかどうかという点が大きいように感じました。

最後に

 これだけ差別なく、ノーマライゼーションの思想が広がっている現代社会。地域での繋がりや見守りなどに力を入れていても、本人のこだわりや価値観がそれを阻害してしまっていることは少なくありません。Aさんの事例検討から、地域で見守ることの難しさを感じました。

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キーワード: 住環境 , 地域包括ケアシステム , 多職種連携

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