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介護する人を先に救うということ

警視庁による「原因・動機が介護、看護疲れにあるとされる自殺者数と殺人事件の検挙数」の2009〜2013年までのデータによると、自殺者は毎年300件、検挙された殺人事件は50件余りとされています。統計結果は把握できた数だけなので、潜在的に介護に追い詰められている数はもっと多いのではないでしょうか。少子高齢化の日本において、在宅でも施設でも慢性的な人手不足にある状況では、ごく身近な人が介護のある生活に追い詰められているかもしれません。介護する人を救うことで、介護される人も結果的に救われるということが大いにあり得ます。ここで、1つの実例をご紹介しましょう。

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差し歯が折れるくらいの激情

 90歳女性、歩行は1人で出来ますが動作が緩慢で排泄を失敗してしまいます。認知症も1年増しに進行し、介護者である同居のお嫁さんに暴言を吐くこともしばしば。船乗りの夫は若いときから留守がちで、家事も介護もお嫁さんが一人で行っています。

 ある日のトイレ介助で、あと少しのところで間に合わず下着と床が汚れてしまいました。介護のある日常生活ではそのようなことは少なくないため、いつものようにお嫁さんは下着の交換に取り掛かりました。

 「あんたが下手くそだからこうなるんだよ。出来ない嫁だね」

 頭の上からこんな言葉が聞こえました。お嫁さんは、耳まで火照るほどの怒りの感情が込み上げたと言います。それでも「認知症だから仕方ない」と歯を食いしばり、トイレの床の掃除まで終えました。しかしふと気が付くと、噛みしめた差し歯が折れていました。次の瞬間、お嫁さんの中で惨めさと、あきらめの感情が芽生えたそうです。

介護者のあきらめと開き直りは「SOS」

 ついに、お嫁さんは介護をしなくなりました。最初に異変に気が付いたのは、週に2回利用しているデイサービスのスタッフです。月曜日の利用時に着用したリハビリパンツがそのまま交換されずに、木曜日の利用の際にずっしりと尿汚染された状態でデイサービスに来るようになったのです。

 酷い尿臭があると共に、陰部もただれそうになっています。自宅での介護の方法の改善が急がれましたが、デイサービスのスタッフとケアマネジャーで情報のすり合わせをしました。そこで尿汚染はあるが、便汚染はないということがわかりました。このことから、お嫁さんは全ての介護をやめてしまったのではないのだろう、苦しんでいるのかもしれないということに気が付きました。ケアマネジャーが訪問して問うと、お嫁さんは言いました。

 「虐待と思われても構わない。お世話はしていない。デイサービスで手厚く介護をしてもらえばいいじゃない」

 「でも、便の時はトイレに付き添ってくれていますよね。汚れていないですもの。デイの職員もみんなそう思っていますよ」

 ケアマネジャーが投げかけたこの言葉に、お嫁さんは下を向いて黙ってしまいました。

次のページは・・ 孤独の叫び「介護される人ばかり優しくされてズルい」

キーワード: コミュニケーション , 癒し , 介護家族

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