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「ショートステイに行った方が良い」とは言うのに、「退院おめでとう」とは言ってくれない

退院はおめでたい、介護申請は病院やケアマネのためじゃない

 この日の訪問をキッカケに、Aさんの夫は週2回の通所リハビリに通うことに決まりました。入浴と専門的なリハビリを行うことが目的です。それから半年が経ち、Aさんが付き添っての自宅廊下での歩行練習、可動域の曲げ伸ばし運動は日課になりました。週2回の通所リハビリは拘縮が起きていないかどうかの確認程度で、ADLが低下するような問題も発生していません。ケアマネジャーはAさんに聞いてみました。

 「Aさん、旦那さんの介護を自宅でできていて本当に感心してしまいます。退院するときは先々不安でありませんでしたか?」

 するとAさんは、

 「退院するとき、病院のみんなが家に帰るなんて、とんでもないと言うの。どの人もショートステイや施設にまずは行くのが普通ですよって。だれも退院おめでとうなんて一言も言ってくれなかった。私はまた夫婦2人で暮らすための相談がしたかったのだけど、それは今の世の中ではおかしいことみたい。半身麻痺だと家に帰れないのが普通なのね」

 と答え、さらにこう続けます。

 「だから、リハビリを一生懸命私に教えようとしているのも一応教えておくか、という印象で全部義務的に見えたからわざと無関心を装ったの。でも私、ちゃんとできているでしょ? 心の名では必死に覚えていたし、忘れないように病院の駐車場に行ったら車の中ですぐにメモを取っていたから。すごいでしょ? 私が介護保険の手続きを了解するのもリハビリや介助の方法を習うのも病院の人たちのためじゃないのよ。夫のために決まっているでしょ。それがわかっていない人に、自分のいいなりになっていると思われたらたまらないわ」

 そして、いつものようにケラケラと笑うのです。

 「誰も退院おめでとうとは言ってくれなかった」

 この言葉がとても印象に残りました。ケアマネジャー自身、この日まで言っていなかった言葉だったからです。

まとめ

 ショートステイの利用が当たり前になってきた昨今、特に退院後は自宅にすぐに戻るより、まずショートステイに行くという流れができつつあります。その既定ルートと異なった意向を示したり、支援する側が期待しているような反応が本人や家族から返ってこなかったりすると、「理解度の薄い人、家族」と決めつけてしまいがちです。

 特に脳血管疾患のため麻痺が生じたとき、本人がリハビリに励む気持ちを支えるのは「自宅に戻りたい」「もとのように生活したい」という思いであることがとても多いでしょう。また支える家族も、必ずしも介護を負担に思う人だけではありません。大切な家族が早く自宅に戻ることができるようにと望んでいる人も少なくないはずです。退院後の支援において「半身麻痺の人はこのルートで進める」「こうあるべき」という観念にとらわれず、まずは「退院おめでとう」と言えるような支援者でありたいと思います。

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キーワード: リハビリ , 医療と介護の連携 , ケアマネジャー

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