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日付:2009/03/24  カテゴリ[摂食嚥下・栄養管理]  閲覧数[29100]

ケアスタッフにもできる! 摂食・嚥下の評価と援助

食べることには、3つの大きな意義があります。1つ目は栄養を体内に取り入れ、姓名を維持すること、2つ目は、活動するためのエネルギーを得ること、そして3つ目は、味を楽しみ、人との交流を楽しむなど、生活の質(QOL)を保つことです。いずれも人間らしく生きるために大切なことです。

戸原 玄(とはら はるか)先生:
日本大学歯学部摂食機能療法学講座 准教授。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修了。
東京医科歯科大学歯学部付属病院 摂食リハビリテーション外来医長を経て、現職。
歯学博士。老年歯科医学会認定医。

第1回「食べる」ってどういうこと?ー今改めて知りたい摂食・嚥下のメカニズムー

摂食・嚥下を援助するためには、その人の食べる機能のどこに問題があるのか、ポイントを見つけることが先決です。そのために欠かせないのが「口から食べるメカニズム」に関する知識。 第1回ではまず、私たちが「食べる」という一言で表している摂食・嚥下という動作がいったいどういうものなのか、そこに障害が起こるとどんな問題が生じるのかについて改めて確認しましょう。

1. 摂食・嚥下の主役や舌。筋肉や骨も重要

食べ物、飲み物を選んで適当な量を口に入れ、噛んだり味わったりした後、喉、そして食道へと送る一連の作業が摂食・嚥下です。 この作業でとても大きな役割を果たすのが「舌」。舌は口の中で食べ物を動かし、まとめ、喉に押し込みます。おいしさをキャッチするのも舌です。ほかにも、いわゆる“のどちんこ”がついている部分である「軟口蓋」、「咽頭後壁(食道に続く喉の壁)」を作っている筋肉、「甲状軟骨(のど仏)」、気管のふたである「喉頭蓋」、声帯、食道の開閉に関係する「上食道括約筋」など、さまざまな組織が絶妙なバランスで連携し、摂食・嚥下を行っています。

解説図

2. 摂食・嚥下には5段階ある

摂食・嚥下の動作には5段階あります。これを「摂食・嚥下の5期」といいます。

※これらの段階は分かれているのではなく実際にはすべて連続して行われています 1 先行期(認知期) 簡単に言えば食べるペースを作る段階。
お茶で口を潤してからお菓子を食べる、ご飯、おかず、みそ汁などを交互に食べるなど、食べやすい量やスピードをほぼ無意識に判断します。
2 準備期(咀嚼期) 食べ物を細かくしながらだ液と混ぜ合わせて粘りを持たせ、
飲み込みやすい形状にまとめ上げる段階です。
ここでまとめ上げたものを「食塊(しょくかい)」といいます。
3 口腔期 食塊を口から喉に送る段階。
主に舌の運動によって行われます。
4 咽頭期 さらに喉から食道へ送る、「ゴックン」という段階です。 軟口蓋が反射的に収縮して食塊が鼻に逆流するのを防ぎます。舌骨と甲状軟骨が持ち上がって食道が開き、喉頭蓋が倒れて気管が塞がります。
5 食道期 絞り込むような食道の運動により食塊を胃まで運ぶ段階です。

3. 摂食・嚥下障害とは「むせること」だけではない

摂食・嚥下障害とは、これら5期のいずれか、あるいは複数の段階に何らかの問題がある状態です。一般に嚥下障害の代表的症状と思われている「飲食によってむせること」がなくても、食べ物を認識できない、噛めない、食塊を作れない、飲み込めないといったことが一つでもあれば、摂食・嚥下障害といえます。 食べられないほどの量をどんどん口に詰め込む、噛めないような硬いものを丸飲みしてしまう、食べ物ではないものを口に入れてしまう、といった人は先行期(認知期)の障害と考えられます。
いつまでたっても口の中に食べ物が残っている人は口腔期(咀嚼期)の障害かもしれません。
「摂食・嚥下障害があるか、ないか」だけをとらえていると、適切な対応が しにくい場合が多いのですが、このように「何期にどのような障害があるのか 」 という視点で見ていくと、具体的な改善策を考えやすくなります。

戸原玄 先生 「摂食・嚥下障害があるか、ないか」を見るのではなく、5期のどの段階にどのような障害があるか?を観察することが大事

脳血管障害だけでなく、パーキンソン病やALSなど神経の病気、口や首周辺のがん、薬の副作用による口腔乾燥、単なる老化によっても摂食・嚥下機能は障害されます。
また、合わない入れ歯、不自然な姿勢などによる影響、認知症によって間接的に引き起こされる摂食・嚥下障害もあります。

4. 摂食・嚥下障害は「脱水や楽しみの喪失」にもつながる

食べ物が気管に入ることで引き起こされる「誤嚥性肺炎」は、今では福祉職の間でもよく知られていますが、問題はこれだけではなく、体を維持するための水分や栄養が不足したり、高齢者の多くが生きがいとさえ感じている「食べる楽しみ」が奪われたりすることにもつながります。 ADL(日常生活動作)にかかわるこうした問題を避け、健康寿命を延ばすという意味でも、摂食・嚥下障害への適切な対応が不可欠です。

摂食・嚥下障害により生じる問題

誤嚥性肺炎・窒息

食べ物による窒息死亡事故は年間4407件(平成18年データ※)。高齢者の場合は桃など表面がつるんとした果物、トロミ剤を入れすぎた液体、パンなどが意外に危険です。
また、肺炎は全体の死因でも4位、肺炎により死亡した患者のうち9割以上が65歳以上の高齢者であると報告されています

脱水・低栄養

脱水や低栄養で体力が落ちると、それだけで肺炎にかかりやすくなります。

食べる楽しみの喪失

食事の時間は家族とのコミュニケーションの時間でもあり、それが奪われるのはとても辛いことです。

※ 出所:平成20年5月8日更新。内閣府食品安全委員会「食べ物による窒息事故を防ぐために」の参考欄の表
「『不慮の事故の種類別に見た年齢別死亡事故数』のうち、『その他の不慮の窒息』の『気道閉塞を生じた食物の誤えん』によるもの」より

5. ケアマネが積極的に取り組みたい

摂食・嚥下に関する専門的な検査は医師もしくは歯科医師などが行いますが、重要なのは、障害のありそうな高齢者を専門職につなぎ、さらに看護師、栄養士、リハビリスタッフなどを交えたチームアプローチ体制を整えていくことです。 ケアマネジャーの皆さんには、チームアプローチのキーパーソンとして、積極的に摂食・嚥下について学んでいただきたいものです。次回は専門知識がなくてもできる「摂食・嚥下に問題のある方を見つける観察ポイント」をお話します。

経口摂取に関するチェックシートを毎回ダウンロードできます。毎号変わりますので忘れずにダウンロードしてください。今回は、「摂食・嚥下障害」のチェックシートです。

摂食・嚥下障害のチェックシート PDFダウンロード
情報提供協力先
会社概要
会社名 株式会社 大塚製薬工場
ホームページ http://otsuka.jp/c/0002
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