日付:2013/11/15  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[860]

維持期リハ打ち切り、介護への影響

平成24年度の診療報酬改定で、介護保険の要介護・要支援者に対する脳血管疾患等の維持期リハの報酬が引き下げられました。さらに、診療報酬に関する再度の見直しがなされない場合、平成26年4月からはまったく算定できなくなります。つまり、要介護・要支援者については、介護保険におけるリハビリサービスへと完全移行が図られるわけです。

これに対し、医療保険のリハ現場からは強い不安を訴える声が上がっています。京都府理学療法士会など4団体が合同で行ったアンケート調査でも、「打ち切り」に対して「納得できない」という声は75%におよんでいます。また、実際に「高齢者で維持期リハを行なっている患者」のうち「介護保険のリハビリ移行」が予定されている人は、脳血管疾患等で15%、運動器リハで9.1%にとどまります。こうした人々に対し、来年4月以降、介護保険のリハビリサービス(デイケアなど)が受け皿となれるのかどうかが不安視されます。

この問題を介護現場の視点から考えたとき、来年4月以降、想定される事態とは何でしょうか。1つは、維持期とはいえ状態像が重い利用者が、リハ現場において一気に増える可能性です。つまり、来年4月以降を想定してPT・OTなどの人材配置と育成をしっかり行わないと、現場負担が急速に高まることが考えられます。医療保険からの移行に対する受け皿がぜい弱だと、移行した利用者の状態像がいっせいに悪化する懸念もあり、現場がパニックに陥ることも考えられます。

こうした状況が生じた場合、当然、ケアマネジメントにも大きな影響が及びます。例えば、長期・短期における目標設定が難しくなり、ケアマネのモニタリング→プランの見直しという手間も増大するでしょう。医療保険制度における見直しが、巡り巡って介護現場のケアマネにも負担をかけるわけです。

この流れは、リハビリに限った話ではありません。平成24年度の診療報酬・介護報酬のダブル改定においては、療養ニーズの受け皿を医療から介護へと移していく一種の「ドミノ倒し」的なイメージが浮上しました。実際、在宅介護の現場では利用者の重篤化が進み、訪問看護の資源充実が叫ばれています。看護師人材が不足している地域のグループホームなどでは、介護職がバイタル面のチェックをせざるを得ない光景を見ることもあります。

確かに急性期医療の充実は必要ですが、安定期や維持期に入った患者に対する「医療側の療養やリハビリ」といった受け皿がしっかりしていないと、介護現場が対応しきれず、結果として再び急性期に逆戻りというパターンが増えかねません。これでは、急性期医療側の医師等の負担が増え、財政状況を好転させることもできなくなります。

患者は生身の人間ですから、どんなに状態像が安定しても、いつ何がきっかけで悪化するかという想定は難しいものです。国は「悪化したらまた急性期に戻せばいい」と言いますが、急性期と安定期を慌ただしく行き来することが、患者にどれだけのダメージを与えるかも考える必要があるでしょう。

病院から在宅へという流れを加速するのであれば、その節目となる部分のサービスを逆にしっかりと整え、患者に与えるダメージを少しでも取り除くことが求められます。それが次に患者・利用者を受け入れる現場に余裕を持たせ、むしろ在宅復帰のスピードを速めるのではないでしょうか。「焦り」をともなう施策というのは、必ずどこかで歪みを生み出します。利用者の生の人間像にしっかりとスポットを当てた改革を望みたいものです。

(福祉ジャーナリスト 田中 元)


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