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日付:2013/11/20  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[1059]

新総合事業で生活援助の運命は?

11月14日に開催された介護保険部会では、要支援認定を受けた人の地域支援事業枠への移行について、一部見直しを行った案が示されました。それまでの厚労省案との違いは、予防給付からの移行を(予防)訪問介護・通所介護の2つに絞り、それ以外の予防給付サービスについては「従来通り」とする点です。新しい事業名についても、現行の介護予防日常生活支援総合事業を再編成したものとして「新しい総合事業」と名付けています。

予防給付から移行するサービスが2つに絞られたとはいえ、大きな流れは変わっていません。平成24年度の介護予防サービス費用の割合を見ると、訪問介護で23.1%、通所介護で36.8%、両者をあわせると6割近くに達します。この6割にあたる部分に対し、運営基準や単価設定が市町村の権限に委ねられることになり、要支援者にとっては大きな変更が加えられることになるからです。

この見直し案が実現された場合、特に訪問介護で何が起こるのか、現場の人と意見を交わしました。まず、市町村の基準や単価設定によりますが、「訪問介護が事業として成り立つのか」という不安が上がっています。大手のように富裕層をターゲットにした自主事業を併設するケースはともかく、地域に密着しつつ介護保険事業のみでやっている中小規模の事業所にとっては、採算の悪化を防ぐための事業モデルの見直しが必要になりそうです。

例えば、予防から完全に撤退しつつ、医療や看護との連携を深めながら、重度者に特化していく方向性が考えられます。重度化要件がクリアできれば特定事業所加算Iの取得も見えてくるわけで、これによって採算性を上げていくわけです。また、国が重度化防止に力点を置く中で、機能向上連携加算が手厚くなる可能性を見据え、リハ事業所との連携を深めていくビジョンも考えられるでしょう。

ただし、いずれにしても、現在雇用しているヘルパー(特に登録ヘルパー)の削減・集約に着手しつつ、残ったヘルパー1人あたりにかかる負担を考慮しなければなりません。訪問現場での看取り対応なども増えていくことを想定すれば、それに対応できるヘルパーの再教育なども課題になってくるでしょう。

それ以上に現場の懸念となっているのは、「この流れで行くと、生活援助がますますカットされていくのでは」という点です。今回の要支援事業の見直しでは、家事などにかかわる部分に多様な生活支援サービスを投入するという流れになっています。例えば、ボランティアなどによる互助的な事業での生活支援サービスと、訪問介護による生活援助の違いはどこにあるのか。そのあたりを利用者側にきちんと示すことができないと、生活援助が生き残っていくことは難しくなるでしょう。

さらに言えば、新たな事業における生活援助と生活支援サービスの違いがあいまいになる流れは、いずれ要介護者向けの訪問介護にも影響を及ぼすのは必至です。将来的に、訪問介護は身体介護に特化し、生活援助にあたる部分はインフォーマルサービスでまかなうという施策も浮上しかねません。

訪問介護の生活援助とは何か。それを提供することで、利用者の自立支援にどのような効果がもたらされるのか。そのあたりを訪問介護事業者だけでなく、居宅のケアマネもしっかりと言葉で説明できることが求められてきます。今から、訪問介護と居宅ケアマネが連携しつつ、生活援助に関する勉強会などを立ち上げ、その成果を地域住民に示していくといった活動を進めたいものです。残された時間は意外に少ないのかもしれません。

(福祉ジャーナリスト 田中 元)


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