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日付:2013/11/20  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[901]

「利益誘導」指摘とケアマネの困惑

いわゆる混合介護(保険・保険外サービスを組み合わせた形態)について、産業競争力会議での厚労省のコメントとして、「ケアマネの利益誘導に配慮する」旨が示されています。介護保険の適用範囲が厳しさを増す中、保険外のインフォーマルサービスに頼る状況はどんどん増えており、そうした時代におけるケアマネ側の倫理が問われているといえます。

ただし、何をもって過剰な利益誘導とするのかについては議論もあるでしょう。もちろん、「利益誘導のためのサービス導入ありき」や「一種のバックマージンを期待する」などという発想は論外ですが、例えば、以下のようなケースはどうなるでしょうか。

きちんとケアマネジメントを行った結果、どうしても介護保険サービスではまかなえないニーズへの対応が必要になったとします。そうしたインフォーマルサービスの導入を図ろうとして、資源が地域に足りない、結果として限られた事業者を使わざるをえなくなる──それが特定の民間企業のサービスになってしまうといったケースもあるでしょう。

保険外のサービスは市場原理に左右される傾向が強い点を考えた場合、介護保険サービス以上に「マーケットを意識して」の地域参入の偏りが生じがちです。そんな中で、地域によっては、全国展開する大規模法人だけが参入できるという状況も生まれやすいでしょう。結果として、特定の企業のサービスしか使えないパターンも生じるわけで、ここに「利益誘導」という判断が下されてしまえば、困惑するケアマネも出てくるはずです。

問題なのは、ケアマネ側の萎縮によって、本来必要であるインフォーマルサービスがケアマネジメントの中に組み込まれなくなる可能性です。仮に「利益誘導」という指摘から何らかのペナルティが下されるという事例(行政処分など)が発生すれば、(まったく悪意がなかったとしても)「利用者にインフォーマルサービスを紹介するのは止めとくのが無難」という心理が起こりかねません。利用者としては、「自分で一からサービス資源を探さなければならない」という負担が生じるわけで、ひいては「ケアマネは役に立たない」というレッテルさえ貼られかねないわけです。

もし、「中立的な立場でのサービス選択」を重視するのなら、地域資源の偏りが起こらないよう、行政主導で積極的な誘致を行ったり、インフォーマルサービスのためのデータベースをしっかりと整えて、ケアマネがサービス紹介を萎縮しないような環境を整えていくことが必要です。また、劣悪なサービス業者に対しては、厚労省と消費者庁がしっかり連携を取りながら、利用者やケアマネに対して的確な情報提供を行なっていくべきでしょう。

そのうえで、どのようなケースを「利益誘導」とするのかというガイドラインの作成も求められます。インフォーマルサービスをケアプランに組み込む際の手法についても、専用の事例集などを作成して現場に配布してもらいたいものです。「保険外サービスだから、行政は関係ない」と手をこまねいていては、ケアマネジメントにも大きな影響が及ぶことを念頭に置かなければなりません。

国は「保険外サービスの活用」について旗振りを進めたいようですが、介護にかかわるサービスは市場原理だけで解決できない公益性があります。その公益性を無視し、「基本は現場に任せつつ、不適正な事例の摘発だけはする」というのでは大きな混乱要因になりかねません。ケアマネ業務は利用者との信頼関係において成り立っており、その部分が揺らがないような配慮が求められます。

(福祉ジャーナリスト 田中 元)


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