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日付:2013/11/26  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[695]

地域包括ケアは企業文化の改革から

5年間で50万人前後の人が、家族の看護・介護で離職しており、政府答弁書でも重要課題であるという認識が示されています。長年議論されているこの問題を、根本から解決するためには何が必要なのかを考えてみます。

現在、介護休業制度のほか2009年度改正で介護休暇制度も新たに加わり、雇用保険による休業中の給付を受けることもできます。しかしながら、例えば介護休業制度の取得率は全就労者の0.1%にも達していません。制度が整うだけでは解決できない問題があり、もっと深い部分にメスを入れる必要があります。

例えば、要介護者の年齢層を考えた場合、その子供が介護を担う場合、年齢的には企業の中で重要な役職に就いているケースも多いでしょう。つまり、「自分が一定以上の期間休んだら、仕事が回らなくなる」という気兼ねが「休業」「休暇」の取得を躊躇させ、結局「介護をするのであれば、完全に会社から離れなければならない(そうしないと、会社に迷惑がかかる)」という思考になりやすいわけです。

となれば、一つの仕事に対する職責を特定の人に集中させることなく、チームでシェアしながら社員同士が支え合うという風土が欠かせません。とはいえ、大企業であればともかく、人材確保がままならない中小企業においては、重要な職責を組織でシェアできるだけの余裕が確保できないことも事実です。

ここで重要になってくるのは、個々の社員の日常的な「支え合う」意識です。例えば、上司が家で家族の介護を要するという場合、部下などがその実情を理解し、「少しでも皆でフォローしていこう」という空気が必要になるわけです。そもそもの入口として、「自分の家で介護が必要になる」ということ自体、「家の事情を仕事場に持ち込む」ことを良しとしない風潮があり、部下や同僚の理解を得る以前に「自分にかかっている介護負担」を隠したままにしてしまいがちです。

仮に、「家の事情」も含めて社員同士が「支え合う」という風土があれば、早めに自分の事情を公にし、組織としても早期からの対処が可能となるでしょう。「言い出しにくい」という空気が問題を先延ばしにし、どうにもならなくなってから「実は…」となってしまえば、周囲としてもフォローしたくても現実的に不可能という状況になってしまうわけです。

もっとも、企業社会において、社員同士の草の根的な「支え合い」精神など理想論と言われてしまうかもしれません。家計格差が依然として大きい中、「他者の仕事のフォローまで考える余裕がない」という心理になるのは、ある意味で仕方ないともいえます。
また、幅広い年代層で大変さを実感できる「育児」と異なり、「介護」の場合はどうしても年齢による認識の差が広がりがちです。例えば、年齢が若い社員であれば、十分な実感が伴わないゆえに「お互い様」という心理になりにくい背景があるわけです。

こうした点を考えたとき、企業のトップが「介護に向けての連帯意識」を組織の中に意識的に植え付けていく必要があります。例えば、新入社員研修の場などにおいて、外部からケアマネなどを呼び、若い世代にも「介護の実情」を啓発することも必要でしょう。
企業内で「介護をめぐる連帯意識」を養うことは、将来的に社員が定年退職して地域に戻ったとき、その地域社会での「支え合い」にかかわりやすくなるという土壌にもつながります。その意味では、地域包括ケアは企業の人材教育から始まっているとも言えるでしょう。まずは、大手の介護事業者などが率先して行なっていくべき課題の一つといえます。

(福祉ジャーナリスト 田中 元)


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