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日付:2013/12/03  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[704]

「サービス当てはめ」に陥らないか

11月27日に開催された社会保障審議会・介護保険部会では、それまでの議論をもとに事務方より「介護保険制度の見直しに関する意見」の素案が出されました。おおむね、それまで提示された改革案を取りまとめたものですが、「要支援者の新事業への移行」や「特養ホームの入所制限」などについて、今後の議論はなお紆余曲折も予想されます。

ここでは「要支援者の新事業への移行」について、今回の素案をもとにもう少し深く掘り下げてみたいと思います。当初の案では、現行の介護予防給付の対象サービスをすべて新事業(新たな総合事業)に移行させるとしていましたが、その後、「移行させるのは訪問介護と通所介護のみ」に変更となりました。

気になるのは、「介護予防訪問介護・通所介護」と「その他の介護予防サービス」との間の線引きについて、国は何を根拠にしているのかという点です。素案を見ると、「訪問介護・通所介護以外のサービス(訪問看護・福祉用具等)は、必ずしも多様な主体による柔軟な取り組みに馴染まない」と述べ、それゆえに「引き続き予防給付によるサービス提供を継続することが妥当である」としています。

逆にいえば、介護予防訪問介護・通所介護は、「多様な主体による柔軟な取り組みに馴染む」ことになります。本当にそうでしょうか。

素案の9Pを見てみましょう。国は介護予防について、「単に高齢者の運動機能や栄養状態といった心身機能の改善だけを目指すものではない」としたうえで、「日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を促し、それによって一人ひとりの生きがいや自己実現のための取り組みを支援」すると述べています。

問題なのは、「それを実現するには」という手段です。素案では、「生活環境の調整」や「地域の中に生きがい・役割をもって生活できるような居場所と出番づくり」があがっていますが、これは設定された枠にすぎません。

ケアマネジメントを手がけている立場であれば日々実感することと思いますが、先にあがっている「一人ひとりの生きがいや自己実現のための取り組み」は、極めて個別性の強い意向に支えられています。それを設定された「居場所と出番」につなげていくのは、実はとても難しいポイントといえます。

例えば、要支援でも軽度の認知症が見られる人はいます。そうした人にとっては、少しでも自分の意向との違和感があれば、「ここは自分のいる場所ではない、私がやるべきことではない」という困惑がストレートに浮かびかねません。設定された「居場所と出番」に自然につなげていくためには、「一人ひとりの意向や自己実現」に寄り添いながら、社会参加の動機づけをどうやって図っていくかという大変に専門性の高いノウハウが必要です。

これができていないと、いわゆる「サービスありき」で、そこに「利用者を当てはめていく」だけのサービス提供になりかねません。この専門性の高いノウハウ、例えればクッションのような役割を担うのがプロの介護サービスであり、そこには最も利用率の高い訪問介護や通所介護が含まれるはずです。

国は「多様な主体による居場所や出番づくり」ができれば、一人ひとりの意向や自己実現に添えると考えているのかもしれませんが、地域資源の拡充のスピードを考えれば、極めて地域格差が生じやすいポイントでもあります。そのあたりを担保するうえで、既存の介護予防訪問介護・通所介護を他の「多様な主体」ときちんと分け、社会参加のためのクッションとして機能させていくこと。今、必要なのはこの点ではないでしょうか。

(福祉ジャーナリスト 田中 元)


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