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日付:2013/12/05  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[748]

居宅介護支援の自己負担導入再び?

介護保険部会に提出された「介護保険制度の見直しに関する意見」の素案ですが、最後のページに気になる項目があがっています。それは、今後新たに議論するポイントで、その中に「被保険者範囲の拡大」「介護保険制度における公費と保険料の関係」そして「ケアマネジメントの利用者負担の導入」という内容が見られます。

いずれも介護保険財政の安定化を図る方策であり、例えば、「被保険者範囲の拡大」については、現行よりも若年の層を被保険者として組み込むことで、より幅広い層から保険料をとる仕組みを模索すると考えられます。

ただし、仮に40歳未満にもサービスを提供するとした場合、介護の原因となる対象疾病をどのように設定するかなどが課題となるでしょう。あるいは「親の介護が必要」という介護者側としての当事者意識に訴えていくという流れになる可能性もあります。

公費と保険料の関係についても、保険料の高騰を防ぐという観点から、公費の割合を高めるという形での議論が予想されます。消費税のアップ分をすべて福祉に使うという国の見解がある中で、その部分の公費をもってくるという議論も出てくるでしょう。ただし、公費をあずかる財務省などが首を縦にふらない可能性もあり、これも非常に難しい選択になってくると思われます。

そして、ケアマネとして最も気になるのが「ケアマネジメントの自己負担導入」です。平成24年度改正に向けた議論でも出てきた論点であり、現場のケアマネにしてみれば「またか」と思う人も多いでしょう。前回改正時の議論では、「サービス利用の入口となるケアマネジメントに自己負担を導入すれば、サービスの利用控えが一気に拡大する」という懸念が大勢をしめ、結局見送りとなりました。今回も同様の流れになると思われます。

こうしてみると、ここであげた3つとも来年の通常国会に改正法案を提出するというスケジュールに間に合わせるにはやや無理があるでしょう。それでもあえて厚労省が提示してきたということは、社会保障制度改革国民会議の議論で出された論点であるという点に加え、「現行のサービスを維持するのであれば、この議論は避けて通れない」という厚労省側のアピールが隠されていると考えられます。

要支援者サービスの市町村事業への移行や特養ホームの入所制限、一定以上所得者への2割負担導入など、「痛み」をともなう改革に対し、依然として根強い反対論があります。厚労省としては、「では、お金をどこから引っ張ってくるのか」という論点を提示することで、反対論の空気を沈めていくという流れを考えているのではないでしょうか。

上記の3点にはやはり手をつけられない、だから素案に示された改革を進めなければならない──そういう一種の交換条件的な思惑が感じられます。これは考えすぎでしょうか。

仮に、そうした議論の流れを作るのであれば、それ以前の問題として「要支援者のサービス移行」で重度化防止の効果はどうなるのか。「特養ホームの入所制限」を進めることで介護者の身体的・精神的負担が増す可能性があるとしたら、国民の経済活動に影響をおよぼすことはないのかどうか。そうした社会的な影響について、様々な観点から精密な分析を行なうことが必要ではないでしょうか。

介護保険は、「お金を浪費する」対象ではなく、「国民生活ひいては国の財政に寄与している」財産である──そういう流れをもっともっと作っていくことが、制度の持続性を高める軸であることを意識したいものです。

(福祉ジャーナリスト 田中 元)


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