日付:2013/12/11  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[883]

消費税分の上乗せと現場の「生活者」

12月4日の介護給付費分科会で、来年4月に予定されている消費増税アップ分の介護報酬改定について、「考え方」の提案がなされています。基本としては、(1)基本報酬への上乗せを考え、(2)消費税負担が相当程度見込まれる加算についても上乗せを検討するというものです。ちなみに、(1)については、「消費税引き上げ分」に「課税割合」をかけることで上乗せ率とする案が示されました。

何をもって課税割合とするかですが、事務方の案では、100%から「人件費率」と「その他の非課税品目率」を引いた計算式が示されています。消費税は仕入れ値にかかるものですから、この考え方は当然といえるでしょう。しかし、釈然としない部分も残ります。

この考え方でいえば、人件費率が高いサービスほど上乗せ率は低くなります。確かに従事者の給与に消費税はかかりませんが、従事者も生活者であることを考えた場合、日常生活での消費において増税分を負担しています。つまり、生活にかかる負担は増えるわけで、その部分への配慮はなされないわけです。

もちろん、民間企業が消費税分を商品価格に転嫁していく際、人件費率を考慮に入れて値上げするかどうかは様々な考え方があるでしょう。ましてや、国民からの社会保険料と公費で成り立つ介護保険サービスとなれば、社会的な公平性を期すうえでも人件費率を計算式から引くのもやむなしかもしれません。

したがって、人件費率を考慮に入れるためには、一種の政治的な判断が必要になります。問題にしたいのは、この「政治的な判断」の部分です。そもそも消費税をなぜ上げるのかに立ち返ったとき、それは社会福祉の向上が大きな軸となっています。一般国民としては、「将来的に医療や介護が充実するのであれば、消費増税をがまんする」というのが大方の心理でしょう。では、医療や介護の充実のために必要なことは何でしょうか。

介護環境の向上のために設備を充実させることも必要でしょうが、やはり基本は「人」です。他業界に比べて人件費率が高いという事業が多いのも、何より「人が要(かなめ)」となっていることを示す現実でしょう。

その点を考えたとき、本当に消費税を医療や介護の充実に使うのであれば、機械的に人件費率を引いた課税割合だけで上乗せ率を決めるのではない「別案」が示されてもよかったのではないでしょうか(介護ロボットなど従事者を守る機器の導入率を考慮するといった方法もあるでしょう)。「生活者である介護従事者の負担減を図る」というメッセージがそこに浮かべば、介護業界に人を呼び込む原動力にもなり、それこそが医療・介護の充実をわかりやすく示すことにもなります。

確かに、基本報酬を上げれば、利用者の自己負担も増えることになり、そのあたりを度外視した政治的判断は難しいかもしれません。しかし、特に施設の介護職員や在宅のホームヘルパーの生活は、処遇改善加算があってもまだまだ厳しく、中にはブラック企業的な事業所が従事者にサービス残業などを強いているという訴えも少なからずあがっています。

そんな中で、「生活者でもある介護従事者」の日々の暮らしが消費増税によって圧迫されれば、業界イメージは悪化して一気に人手不足が襲いかねません。平成26年度の診療報酬のマイナス改定がささやかれる中、平成27年度の介護報酬改定もその影響を受ける可能性が高まっています。そこに今度は消費税10%が加わればどうなるか。この点を考えたとき、せめて10%時の報酬上の手当てでは、人件費率の扱いに一考を求めたいものです。

(福祉ジャーナリスト 田中 元)


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