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日付:2013/12/18  カテゴリ[業界情報]  閲覧数[1628]

問題解決の「ひらめき」の前兆として、脳内の神経細胞の活動が上昇する - 東北大

12月6日、東北大学電気通信研究所 東北大学大学院医学系研究科は、「何かをひらめいたときの前兆として、脳内神経細胞活動のゆらぎが上昇する」と発表した。

人や動物が問題を解決するために、具体的な解決方法を考え付くときの兆しとして、脳内(前頭前野の部分)の神経細胞の活動にゆらぎが上昇することが分かった。このゆらぎは複雑系とされる相転移前の臨界ゆらぎとして捉えられることを世界で初めて発見した。

ものごとの急激な変化を「相転移」と呼ぶことがあるが、その前兆の代表として不規則性やゆらぎが増えたり大きくなったりすることは以前から知られている。そうした相転移を起こす直前のゆらぎの増大は、複雑なシステムにおける「臨界ゆらぎ」と呼ばれている。

この臨界ゆらぎは、ヒトの日常生活の中においても観察される可能性がある。例えば問題を解決する場面で、さまざまな考えの中からパッと解決法を思いつく(ひらめく)ときに観察される可能性があるとされた。研究グループでは、今回こうした課題を解決する調査とした。

【調査方法】
・ニホンザルにコンピュータ画面で簡単な迷路を見せ、ゴールまでカーソル(目印)を移動させる迷路課題を訓練した。
・課題を訓練しているニホンザルの前頭前野の神経細胞活動を調査した。
・訓練されたサルでは、訓練により途中の障害物を避けてゴールまで辿り着く経路を、簡単に思いつくことができるようになる。
・ゴールまで到達するための解決法を思いついた状態になる前に、神経細胞活動の不規則さの程度が上昇することを確認する。

【調査結果】
この迷路課題の遂行中に、問題解決を司ると考えられている大脳の外側前頭前野から神経細胞活動を記録し、行動計画期間(課題が提示されてから具体的な行動を開始するまでの期間)の神経細胞活動とゆらぎの程度を解析した。ある細胞グループでは、行動計画期間の初期では、ゴールの位置に応じて、活動が変化し(初期安定状態)、神経細胞活動がゴールの位置情報を符号化していることがわかった。

慣れてくると、実験の後期では、同じ細胞グループが、サルが一手目で具体的にどの方向にカーソルを動かすかに応じて、活動が変化するようになることが分かった(後期安定状態)。具体的な行動を符号化していることが確認されたことから、サルが迷路課題を解決しようとしている間に、神経細胞活動の状態が"最終ゴール位置を符号化している"初期安定状態"から"後期安定状態へと大きく変わっていくことが分かった。

さらに、神経細胞の活動のゆらぎの程度として、神経細胞活動の不規則さの程度を解析したところ、神経細胞活動が、"ゴール位置を符号化している状態"から"具体的な行動を符号化している状態"へと変化する以前、つまり、ゴールまでの道を思いついた状態にたどり着く前に、神経細胞活動の不規則さの程度(ゆらぎ)が上昇することが確認された。これは、解決を"ひらめく"直前に、神経活動の「ゆらぎが上昇」したことを意味している。

このゆらぎの特性の解明に向け、興奮細胞、抑制細胞から構成される神経回路モデルをコンピュータ上で構築し、回路の状態が変化する時の細胞活動のゆらぎの特性を検討した結果、わずかな入力と出力の比率の変化が回路の安定性を大きく変動させていた。その際に、回路の状態が相転移する直前に細胞活動の"ゆらぎ"が上昇することを突き止めた。
この現象は前頭前野細胞活動の"ゆらぎ"の上昇と同様で、複雑系で見られる臨界ゆらぎが、前頭前野細胞活動においても存在することを示唆する結果となった。

今回の結果について、研究チームはわずかなシナプスにおける入出力の変化であっても、大規模な神経回路の"ゆらぎ"の異常を引き起こし、回路の安定性や柔軟性の特性を変えてしまう可能性が示されたとした。今後の研究で人間の意思決定に伴う脳の大きな状態変化の前兆現象を捉える技術の開発が進めば、精神疾患などに伴う病的な意思決定の診断法や、ユーザーの心の変化に素早く追従する革新的な脳・機械インタフェースの開発、状況に応じて自ら判断できるロボットの開発などにつながることが期待されるとコメントしている。

この研究成果は、人間は意思決定する際に脳の状態変化の前兆を捉える技術の開発が進めば、精神疾患患者における病的な意思決定の診断法や、ユーザーの心に素早く反応する革新的な脳・機械インターフェースの開発につながると期待される。

東北大学

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