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日付:2013/12/20  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[2131]

キャリアに寄与する人事異動とは

厚労省の「社会福祉法人のあり方に関する検討会」の資料の中に、法人規模の差に着目した特徴と留意点が整理されています。この中の「人事異動」の項目に注目してみます。

示された表によれば、大規模法人の特徴(メリット)として、「広範な人事異動が可能となり、職員のキャリア形成に寄与」と述べています。逆に、小規模法人の留意点(デメリット)として、「人事異動の幅が限られ、職員のキャリア形成に限界がある」となっています。

注意したいのは、大規模法人では確かに人事異動が容易ですが、それがストレートに「職員のキャリア形成に寄与」していると言い切れるのかという点です。資料でも事業展開について「計画的運営のための体制づくり」が指摘されていますが、「多様な事業」と「職員のキャリア形成」がきちんと結びつく人事異動が行われているかどうかが問題です。

介護保険分野では、平成18年度に「介護予防サービス」や「地域密着型サービス」が誕生し、多くの大規模社福でも、多様なサービスを地域に展開する光景が見られました。その前後に現場を取材していて気になったのが、「現場が人手不足のまま、事業の幅だけを拡大していく」という傾向を感じたことです。

例えば、本体の特養ホームで、ベテランの施設ケアマネが現場スタッフの統括管理を行なっているケースがあります。その法人が平成18年度に地域密着型サービス(小規模多機能型居宅介護など)に参入した際、それまでの施設ケアマネを、「現場の統括管理を行なってきた」という点だけで、いきなり新サービスを立ち上げるための責任者として人事異動するというパターンが見られました。

確かに「現場の統括管理」を担ってきたキャリアをみれば、新規事業の立ち上げを担うのに適していると思われがちです。慢性的な人手不足を考慮した場合、現場で異動させられる人材も限られるのは確かでしょう。問題なのは、異動する当人がどのようなキャリアビジョンを描いているか──その点とのすり合わせがしっかり行われているかどうかです。

中には、「施設ケアマネ+入職3年以内の職員」という組み合わせで新事業を担わせるケースも見られました。法人側としては、「現場管理に慣れたベテラン」と「(いい意味で)大規模な施設ケアに染まっていない職員」という組み合わせが最適という判断があったのでしょう。しかし、それは単純な組織構造だけを考慮したものであり、個々のスタッフの資質に切り込んだものではありません。

仮に、その施設ケアマネが「利用者の意向と地域との接点をもっと大切にしていきたい」という業務ビジョンを持ち、同じ思いを共有する現場スタッフを「管理者である施設ケアマネの視点」で部下として選抜していくという流れができていれば、両者のキャリア形成にとっても有意義な人事異動となるでしょう。

しかし、普段からそうした「思い」を法人トップがきちんとつかんでいないと、当人たちの意に沿わない人事異動になりかねません。「新天地だから新しい発見があるはず」と言ってしまうのは簡単ですが、新事業だからこそ想定されない様々な困難も生じます。それを乗り越えるには赴任するスタッフの中に「ぶれない軸」が必要で、それがしっかりしていないと「やる気」と「現実」の溝が修復できず、燃え尽きの危険も高まりかねません。

例えば、現場スタッフと法人トップが、それぞれのキャリアビジョンをめぐっての面談などを普段からきちんと実施しているか。真の適材適所を実現するうえでは、そのあたりがもっとも大きなポイントになるはずです。

(福祉ジャーナリスト 田中 元)


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