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日付:2013/12/25  カテゴリ[ニュース解説]  閲覧数[1729]

ガイドライン作成が総合事業のカギ

12月20日(金)に開催された第54回介護保険部会では、介護保険制度の見直しに関する意見案について、最終的なとりまとめが行われました。

この日に提示された意見案は、前回提示されたものに部会委員の意見を追記・反映させたものです。この意見書をもとに介護保険法の改正案が作成され、来年前半の通常国会に提出されることになります。

詳細については、当サイトのニュースでもアップされている(下記関連ニュース)ので、そのつど各論ごとに解説していきたいと思います。ここでは、要支援者の「新たな総合事業」への移行にともない、大きなポイントになると思われる点をあげてみます。それは、市町村やサービス提供現場に向けたガイドラインの作成です。

提示された意見案では、市町村による新たな総合事業の内容について、「介護保険法にもとづく指針で、ガイドラインとして示し、市町村の取り組みを支援する必要がある」としています。このガイドラインの中には、「市町村による事業での様々な創意工夫の例」や「認知機能が低下している者に対する事業など」の留意点も盛り込まれる予定です。

加えて、このガイドラインは、要支援者に対して専門職がどのようにサービスを提供するか──この点にも言及されるとしています。どこまで踏み込むのかは明らかではありませんが、注意したいのは、意見書の中で「適切な単価のものに提供される」ことが目的であるという点が認められることです。

新しい総合事業では、人員・運営基準が緩和され、単価設定が従来の予防給付よりも低くなることが予想されています。そうなれば、当然サービスの質、ひいては重度化防止の効果がどこまで上がるのかが課題として浮かんでくるでしょう。そのあたりをガイドラインでカバーするという意図が認められます。

現場から見た場合、「こうしたガイドラインでどこまで重度化防止の実効性が担保できるのか」という疑問はあるでしょう。仮に示されたガイドラインが設定された単価に見合わないとなれば、「やはり参入は見合わせたい」という事業者も出てくるはずです。仮に参入したとしても、事業者側に「現場担当者の人件費を抑える」という力が働けば、今度は「人が集まらないゆえに事業の継続性が難しくなる」ということになりかねません。

となれば、このガイドラインをどのように作成するかというのは、新たな事業の成否を左右する極めて重大なポイントとなります。意見書では、「関係者の意見を聴きつつ、策定されることが適当である」と述べていますが、ここでいう「関係者」とは誰なのか。大規模法人のように多角経営によってコストを調整しやすい事業者であればともかく、中小規模の法人やそうした現場で働く従事者にとっては無理難題と映ることもありそうです。

前者だけの意見を聞いて、「事業者側の納得を得たガイドラインができた」となってしまえば、後者にとっては「冗談ではない」ということになりかねません。その瞬間に、新たな総合事業への不信感は一気に増し、例えば大規模法人が参入しにくい過疎化した地域では、サービス格差の影響をもろに受けることも考えられます。そうした地域の要支援者は、宙ぶらりんの状態に置かれるわけです。

仮に、これからガイドライン作成のための検討会を開くのであれば、多様な規模の法人と多様な従事者の代表もしっかりと含め、国にとっては多少耳の痛い意見でもきちんと受け止める作業が欠かせません。今後の介護保険制度の行方が、このガイドライン作成にかかっているという意識が求められます。

(福祉ジャーナリスト 田中 元)


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