日付:2013/12/27  カテゴリ[事故・違反]  閲覧数[9990]

いまだ全貌は不明 利用者預貯金の着服・居室閉じ込め等が発覚 大阪「ロイヤル花園」

大阪市福祉局生活福祉部地域福祉課は12月24日、同市西成区にある高齢者向け賃貸マンション「ロイヤル花園」(全144戸)において、入居者36人の預貯金計769万円を不正に引き出したり、入居者を部屋に閉じ込めるなどの虐待があったことを明らかにした。

市では24日付で、2007年の開所時から行われていた疑いがあるとして、運営会社「株式会社はなぞの」(旧・株式会社アットホーム、平林永吉社長)を高齢者虐待防止法・障害者虐待防止法に基づき改善指導した。入居者に対する権利擁護を図るための措置として、全額返金させたうえで一部の入居者を別の施設に移すという。

市は「他にも不審な金銭管理など組織ぐるみで行っていた疑いがある」として、警察に通報する処置をとっている。

賃貸借契約に介護サービスが含まれる施設は「有料老人ホーム」に該当し、福祉各法上の位置付けはない。マンションを所有する運営会社と入居者との間で賃貸借契約が結ばれているだけで、介護については入居者が個別にサービス事業者を選ぶ形となっている。ただし、その大半がマンション業者が運営する介護事業所などと契約し訪問介護を受けていた。

高齢者向け賃貸マンション自体は、法的には一般の賃貸住宅と同じとされ、都道府県・政令指定都市の認可や指定が必要な高齢者福祉施設などと異なり、介護保険法上の行政処分などはできない。今回、金銭管理の厳格なチェック態勢や虐待防止を求める市の改善指導が行われるものの、法的な強制力は事実上ないことにもなる。

「ロイヤル花園」は入居者募集パンフレット等で「介護スタッフ24時間駐在」などと宣伝し、平成19年ごろから運営していた。居室はワンルームで、家賃は大阪市における生活保護の住宅扶助費上限額と同額の4万2,000円。介護士資格のある専門職員による介護サービスや別会社の食事サービス(月3万9,000円)が提供されると謳われていた。

不正が発覚したのは今年2月、「金銭管理の担当者が入居者の預かり金を使い込んでいる」との情報提供が区役所にあったことにあった。その後市が調査に入り、入居者のなかに生活保護者がいたため、生活保護法に基づいて口座管理状況を確認したことから、次々と不正が明らかになった。

入居者の預貯金の不正利用については、今年2月から10月の入居者116人のうち、生活保護受給者の男女36人の口座から確認された。被害最高額は140万円。それぞれ入居者とホーム側で金銭管理契約は結ばれていたが、いつの間にか通帳は廃棄され、入居者ごとの金銭出納簿の記載も確認できなかったという。運営会社は「預かり金として引き出した」と説明しているが、金額が多すぎたり、認知症の疑いのある入居者も多いため「不適切な出金」と判断された。

通帳管理は女性職員2名によって行われていたが、不正が明るみに出た時点で入居者に全額返還されたという。ただし、引き出した理由について「上司の指示で、(入居者の)衣服代などのために引き出した。通帳は磁気の部分がこわれたため、シュレッダーで裁断した」などと曖昧な説明に終始している。市側に提出された通帳はすべて再発行されたものであり、職員2名の刑事責任が問われる可能性もある。

現時点では私的流用は確認されていないが、生活保護受給者36人以外の口座状況や被害事実は確認できていないため全貌は不明のままだ。

市では、虐待事例計13件も確認している。入居者のオムツが汚れたまま替えられておらず、室内も掃除されていないなどのネグレクトも目立つ。なかには徘徊する60代女性の部屋にカギをかけ、居室に閉じ込めていたケースもあった。この閉じ込めについて運営会社は、「入居者の安全を考えての措置で、虐待とは認識していない」などと釈明しているという。

市は「いわゆる高齢者専門の『囲い屋』マンション業者の実態はなかなか分かりづらい。設置の届け出などが義務付けられておらず、市ですべてを把握することは事実上できない」などとも話す。いっぽう運営会社側では、24日の取材に対して「取材に対応できる者がいない」などとコメントするにとどまっている。

以下、重複被害者をふくめ計42名(65歳以上37名、65歳未満5名)におよぶ虐待種別の内容や今後の対応の詳細は次のとおり。

【経済的虐待】(36件)
金銭管理の委任を受けている入居者36名の預貯金を明確な理由がないにもかかわらず不当に引き出した事実をもって金銭搾取があったと判断した。
(1)ロイヤル花園の金銭管理担当者が、平成25年2月18日から平成25年4月24日の間に上司の指示により入居者36名の口座から7,690,000円を引き出し、当該出金状況が記載された通帳を破棄し、各入居者の金銭出納簿にも記載せず、現金を紙袋に入れて持ち歩いていた。本市の調査において、出金した金銭の使途を尋ねても十分な説明が得られなかったことから、不適切な出金と認定し、本市の指導により入居者各人の口座に同額を返還させた。
(2)この他にも、不審な金銭の管理状況が多数あり、引き続き確認作業を行なっている。

【身体的虐待】(1件)
入居者1名を居室内に閉じ込め行動制限を行なっていた。
(1)内側からドアを開けることができない状況下で入居者1名を居室内に閉じ込めていた。

【ネグレクト】(12件)
パンフレットやホームページで「24時間介護スタッフ常駐」と広告し、要介護度が高い高齢者を受け入れていたにもかかわらず、12名の入居者についてロイヤル花園として十分な世話がなされていなかった。
(1)各居室には壁にインターホンが設置され「ナースコール」と称しているが、寝たきり状態の入居者は手が届かず助けを求めることができない状態に置かれていた。
(2)おむつが汚れた状態で放置、爪が伸び放題、室内の不衛生、シーツの不衛生、異臭など。

【被虐待者への対応】
虐待を受けていた入居者には、別の施設への入所や公的な金銭管理の利用など権利擁護を図るための措置を講じている。
(1)分離保護(10件)老人ホームへの措置入所7名、入院中で退院後は施設入所が必要と判断した者3名
(2)成年後見市長審判請求(11件)
(3)「あんしんさぽーと事業」利用(16件)
(4)ケアプランの見直し等を各高齢者のケアマネージャー等と順次協議中(11件)

【今後の対応】
平成25年12月24日付で、ロイヤル花園に対し、次の事項について文書により改善指導を行なった。
(1)入居者の心身の状況の変化を常に見極め、マンションでの単身生活の継続が難しくなった場合には関係機関と相談のうえ適切に対応されたい。
(2)入居者の金銭管理について、適切に行うことはもとより、厳格なチェック態勢を構築されたい。
(3)虐待防止研修や人権研修を繰り返し実施するなど研修実施体制を充実し、従事者の知識と技術の向上を図られたい。

(ASTRA医療福祉研究グループ)


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